政府が検討を進める退職金税制の見直しについて、石破首相は5日の参院予算委員会で「慎重かつ適切に行うべき」との考えを示した。現行制度は長く働くほど優遇される仕組みだが、これが転職を阻む一因になっているのではないか——そんな指摘が浮上している。
ただ、一方で「拙速な見直しは避けるべき」との声も根強い。特に立憲民主党は、就職氷河期世代への影響を懸念している。この世代はバブル崩壊後の厳しい雇用環境を生き抜き、ようやく安定したキャリアを築いてきた人も多い。そこにきて退職金制度が変われば、「割を食うのは彼らではないか」との不安があるわけだ。
退職金税制の何が問題なのか?
そもそも退職金税制とは何か。ざっくり言えば「長く働いた人ほど税負担が軽くなる」仕組みだ。これにより、企業の安定雇用を促してきたが、時代は変わった。終身雇用が崩れ、転職が珍しくなくなった今、この制度がキャリアの流動性を阻害しているのではないか、というのが政府の問題意識だ。
「新しい資本主義実現会議」が提起したのもこの点で、転職を選びやすい環境を整えるには税制改革が必要ではないか、というわけだ。しかし、これを単純に「長期勤務者の優遇を減らせばいい」という話にするのは乱暴だろう。なぜなら、すでにこの制度を前提にキャリアを積み上げてきた人もいるからだ。
特に影響を受けるのが、就職氷河期世代だ。彼らはそもそも就職時点でハンデを負っていた。厳しい競争の末に正社員の座をつかみ、ようやく退職金を受け取る日を視野に入れられるようになったタイミングで「制度変更」と言われれば、不安に思うのも当然だろう。
退職金税制の現状と見直し案の比較
では、現行制度と見直し案では何が変わるのか。簡単にまとめると以下のようになる。
項目 | 現行制度 | 見直し案 |
---|---|---|
長期勤務者の税制優遇 | あり | 縮小の可能性 |
転職者への影響 | 不利になりやすい | 緩和の可能性 |
税負担の変化 | 軽減措置あり | 再検討 |
就職氷河期世代への影響 | 現行の恩恵を受ける | 不利益の懸念 |
この表を見てもわかるように、長く働いた人への優遇が縮小される一方で、転職者にとっては負担が減る方向に進む可能性がある。だが、単に「公平性」の名の下で制度をいじると、世代間で得をする人と損をする人の差が大きくなりかねない。
では、どうするべきか?
結局のところ、退職金税制の見直しは、単なる「税制改革」ではなく、「日本の働き方をどうするか」という根本的な問題につながる。政府は「労働市場の流動性を高める」と言うが、それだけで本当に転職がしやすくなるのか。税制だけ変えても、企業側の採用姿勢や労働者の意識が変わらなければ、効果は限定的だろう。
今後、政府は与野党の意見を踏まえて議論を進める構えだが、大切なのは「誰のための改革なのか」という視点だ。ただ制度をいじるだけではなく、働く人の実態に即した調整が求められる。少なくとも、就職氷河期世代をはじめとする「制度変更の影響を大きく受ける人たち」にどう配慮するか——そこを抜きにした改革は、単なる帳尻合わせで終わる可能性が高い。

#退職金税制 #石破首相 #税制改革 #就職氷河期 #労働市場 #政策議論
コメント