地方の民放局が生き残るために——テレビ離れの時代に挑む新たな戦略

大学を卒業して僅か1年目のルポライターとして、私はこの数か月、全国の地方テレビ局を回って取材してきた。正直言って、その現状は思っていた以上に厳しかった。テレビ離れなんて言葉はよく聞くけど、実際に現場を見ると、その深刻さが骨身に染みる。

この記事では、私が見てきた地方民放局の現状と、彼らが模索する生き残り策について書いていきたい。ちなみに、私自身はNetflixやYouTubeばかり見ていて、地元のテレビなんてほとんど見ていなかったクチだ。だからこそ、新鮮な目で業界を見られるのかもしれない。

サーモン養殖、マジでやってた

「取材先はテレビ局ですよね？なんで養殖場に来てるんですか？」

北陸のある民放局を訪れた際、最初に案内されたのはなんとサーモンの養殖施設だった。冗談かと思ったが、真面目な話だった。この局、実際にサーモン養殖事業に参入していたのだ。

放送収入が右肩下がりの中、新たな収益源を探していたところ、地元の豊富な水資源を活かせる事業として養殖に目をつけたという。最初は半信半疑だったが、話を聞くと意外と理にかなっていた。

「テレビ局の強みって何ですか？」と聞いたところ、広報部長はこう答えた。
「地域への発信力ですよ。養殖サーモンのブランド化にはこれが役立ちます。それに、養殖の様子を定期的に番組で取り上げることで、視聴者の関心も高まる」

ただし、すぐに成果が出るわけではないらしい。

ネットに抜かれ「テレビ離れ」、地方の民放の対策は…サーモン陸上養殖・地元中小企業支援・系列局内で再編 : 読売新聞オンライン https://t.co/FTx2cGcdid
— 読売新聞西部本社編集局 (@YOL_seibu) March 7, 2025

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— 渋澤栄一郎 plus+ (@E_SHIBUSAWA) March 8, 2025

この表は彼らの養殖事業計画書から抜粋したものだが、課題の方が具体的で、メリットの方が抽象的なのが印象的だった。テレビ局の人間が書いた資料というより、水産業の専門家が書いたような内容で、思った以上に本気度を感じた。

ちなみに、このサーモンを食べさせてもらったが、これが意外においしかった。養殖と聞くと何となく劣るイメージがあったけど、全然そんなことなかった。これは売れるかも。

次に訪れたのは、九州のある地方局。ここでは「地域密着」を徹底的に追求していた。

「うちはもう、東京の番組をただ流すだけの箱じゃないんです」

番組制作部のディレクターはそう語る。彼らは地元企業のPR動画制作から、SNS運用のサポートまで、総合的なメディア戦略をサポートしていた。テレビCMだけでなく、YouTube用の動画も一緒に作り、若い層にも届くコンテンツ作りを意識している。

「テレビ離れって言っても、地域の情報を得る手段として、地方ではまだまだテレビの影響力は大きいんですよ」

確かに都会と違って、地方では地元のニュースや情報を得るメディアとしてのテレビの存在感はまだある。ただし、若年層の取り込みは課題らしい。

とはいえ、こうした取り組みにも問題はある。表にあるように、企業の広告予算には限りがあるし、SNS運用などのノウハウは放送局員にとっては新しい挑戦だ。でも、逆に考えれば、そこに新しいビジネスチャンスがあるとも言える。

個人的に面白かったのは、地元の高校生と一緒に番組を作る取り組み。若者の「生の声」を取り入れることで、視聴者層の拡大を狙っているらしい。まあ、私から見ると、ちょっと「おじさんが考える若者向け企画」感があったけど、少なくとも変化を求める姿勢は評価できる。

もう一つ、業界で大きな動きとなっているのが系列局の経営統合だ。日テレ系の4つの地方局が統合を進めているという話は業界内でも大きな話題になっている。

中部地方のある局を訪れた際、幹部の一人はこう語った。
「統合するメリットはあるけど、地域性を失うリスクもある。我々はまだ独自路線で行く選択をしている」

統合派と独立派、どちらが正解なのかはまだわからない。

ただ、統合すれば必ず成功するという保証はない。逆に言えば、独自路線を貫いても生き残れるという保証もない。それぞれの局が、自分たちの強みは何かを見極めて進むしかないのだろう。

この取材を通じて感じたのは、「テレビ局」という枠組みにとらわれすぎると、生き残れないということ。放送だけじゃなく、地域のコンテンツ制作会社として、あるいは地元企業のメディア戦略をサポートする会社として、機能していく必要がある。