スタートアップ界隈に潜む性暴力とセクハラの実態——声を上げた女性の勇気

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スタートアップという言葉を聞くと、多くの人が自由でクリエイティブな世界を思い浮かべるかもしれない。私もそうだった。だが取材を進めるうちに、その華やかなイメージの裏側には想像以上の闇が広がっていることを知った。

松阪美穂さん(仮名)の告発は、業界に大きな波紋を広げている。彼女が語る現実は、起業という夢と引き換えに性的関係を要求されるという、許しがたいものだった。

投資の条件は「ホテルで会うこと」

「最初は普通の食事だと思っていました」

松阪さんはそう語る。彼女は大学卒業後、テクノロジーを活用した教育サービスの立ち上げを目指していた。事業計画は評価され、ある投資家からコンタクトを受けたという。

「でも食事が終わると、『もっと話したい』と言われ、なぜかホテルのバーに連れていかれたんです。そこで『もっと親密になれば、投資額を倍にできる』と言われました」

松阪さんは最初、これが業界の慣習なのかもしれないと思った。しかし友人の女性起業家と話すうちに、同様の被害に遭った人が少なくないことを知り、沈黙を破ることを決意したという。

「本当はこの記事に実名で出たかったんです。でも弁護士に止められました。業界から完全に干されるリスクがあるって」

取材中、彼女の表情は何度か曇った。将来への不安が伝わってきた。

なぜ、この問題は放置されてきたのか

スタートアップ業界でセクハラや性暴力が蔓延する背景には、いくつかの要因がある。取材を通じて見えてきたのは以下のような構造的問題だ。

問題点詳細
資金調達と権力の不均衡スタートアップ企業は常に資金難。「投資してもらえなければ会社が潰れる」という切迫感が、不適切な要求への抵抗を難しくしている。
密室での交渉文化「打ち合わせ」の名目で、バーやホテルのラウンジなど人目につかない場所に呼び出されるケースが多く、証拠も残りにくい。
男性中心の業界構造投資家の約9割が男性という統計もあり、セクハラの訴えが「起業家として不適格」という烙印につながる恐怖が強い。

「チャレンジする精神が重視される業界なのに、この問題に関してはみんな保守的なんです」と松阪さんは指摘する。私もこの矛盾に違和感を覚えた。革新を掲げる業界が、こんなにも古い体質を温存しているのはなぜなのか。

変化の兆しはあるのか

松阪さんの告発後、業界内外で少しずつ支援の動きが出てきている。だが正直なところ、本格的な変革には程遠い印象だ。

支援策詳細
被害者の相互支援松阪さんを中心に「スタートアップユニオン」という非公式グループが発足。匿名での相談窓口を開設している。
投資家側の反応一部のベンチャーキャピタルがガイドラインを策定。しかし具体的な罰則はなく、表面的な対応との批判も。

取材中、ある女性投資家は「私たちも変えたいと思っているけど、発言力のある男性たちが本気にならないと難しい」と漏らした。彼女自身、発言することでポジションを危うくする恐れがあるため、匿名を条件に取材に応じてくれた。

松阪さんがこの業界でキャリアを続けられるかは未知数だ。告発したことで、「面倒な人」というレッテルを貼られるリスクも大きい。それでも彼女は「私よりもっと若い女性たちが、同じ思いをしないように」と語る。その覚悟に、取材者として心を打たれた。

他人事ではない——どの業界にも存在する問題

この問題は決してスタートアップ業界だけの話ではない。

「どの業界でも似たような権力構造はあります。スタートアップは特に資金と経験の格差が極端なので、こういった問題が表面化しやすいだけ」

こう語るのは、メディア業界からスタートアップ業界に転職した30代の女性だ。彼女によれば、前職でも似たような経験があったという。

取材を進めるなかで、若い男性起業家も被害に遭うケースがあることも分かった。これは単なる男女の問題ではなく、権力の濫用という根深い問題なのだ。

声を上げることの意味

松阪さんの告発が業界を変えるきっかけになるかどうかは、まだ分からない。しかし、彼女の勇気ある行動が、同じような被害に苦しむ人々に希望を与えていることは間違いない。

「正直、怖かったです」と松阪さんは言う。「でも、私が声を上げなければ、この状況は永遠に続くと思ったんです」

取材の最後に彼女は「これは私一人の戦いじゃない」と力強く語った。その言葉には、社会全体への問いかけが含まれているように感じた。

私たちは彼女の勇気ある告発を、一過性のニュースとして消費するのか。それとも、構造的な問題として真摯に向き合うのか。

この問題の行方は、結局のところ私たち一人ひとりの姿勢にかかっているのではないだろうか。

——取材・文/みゆき(21)​​​​​​​​​​​​​​​​

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