韓宗熙サムスン副会長急死——テック界の大黒柱を失って

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特派員 中村みく(21)

雨の降るソウル。サムスン本社ビル前の白い花が雨に濡れている。通りがかった男性が足を止め、頭を下げた。48時間前、韓宗熙副会長は63歳でこの世を去った。

正直に言います。私、この取材を引き受けたとき、韓宗熙って誰?って感じでした。サムスンと言えば李在鎔会長しか知らなかったし。でも現地に来て話を聞くうちに、この人がどれだけスゴい人だったか、ちょっとずつわかってきたんです。

先週からソウルで取材してて、サムスン関係者とか10人以上と会いました。韓国経済の縮図みたいな話がいっぱい聞けたんですよね。

「優しかった韓さん」——社員たちの声

「怒鳴らなかったんですよ」

カフェでコーヒーを飲みながら、サムスン電子デザイン部の30代男性がぽつりと言った。韓国の財閥トップって怖そうなイメージあるじゃないですか。でも韓副会長は違ったみたい。

「新人の意見も聞いてくれたんです。他の役員はイラつくのに」

彼が入社した2017年くらいって、あのギャラクシーのバッテリー爆発問題で大変な時期だったはず。それでも韓さんは週1で若手と朝ごはん食べてたんだって。

「マジですか?」思わず聞き返しちゃった。

彼、スマホ見せてくれたんですよ。会議室で若手と和やかに話す韓副会長の写真。にこやかな表情が印象的でした。

技術者から副会長へ——普通じゃない経歴

韓宗熙さんの歩み方、普通じゃなかったみたい。エリートコースじゃなくて。1988年サムスン入社のとき、ただの技術者だったんだって。

「とにかく壊す人でした」と元役員が教えてくれた。

「ライバル製品を分解して、なんでウチより良いのか調べまくる。そして『うちもできる』って言い切る。その姿勢で周りを動かしていった」

その後の出世コースはこんな感じ:

ポジション主な功績
1998年映像戦略室長デジタルTV戦略を作る
2005年液晶TV事業責任者北米・欧州でシェア伸ばす
2013年映像部門長QLED技術開発
2022年副会長就任AI戦略強化

この経歴見てもピンとこないですよね。でも彼のすごさって単純で。「ソニーに勝つ」ってことだけ考えてた。当時の家電市場ってソニー天下だったんです。その城を崩したのが韓さん。

「SAMSUNG」って文字そのものをブランドにした人なんですよ。2006年以降、テレビの世界シェアでソニー抜いて、ずっとトップなんです。

「あれ?サムスンって半導体じゃないの?」って思いません?でも消費者の頭の中に「サムスン」ってブランドを焼き付けたのは、この人が率いた家電とスマホだったんですよね。

共同CEO制崩壊——このままでいいの?

ちょっと難しい話になります。

サムスン電子って、半導体担当の全永鉉さんと家電・スマホ担当の韓宗熙さんの「共同CEO」だったんです。変な感じするけど、こんな巨大企業だとそうなるんでしょうね。

「建前の話ですけどね」って中間管理職の人が小声で言ってた。「実際は李会長が最終決定者です。形だけ専門分野で分けてた感じです」

今は全永鉉さん一人がCEOになったみたい。韓国メディアはほぼ支持してるけど、街の声は違います。

「半導体は稼ぎ頭、家電・スマホは看板。バランスよかったのに、これからは半導体よりになりそう」って証券会社のアナリスト(32)が言ってました。

私も同感です。全さんは優秀かも知れないけど、韓さんみたいに消費者目線あるかな?サムスン内部でもそんな不安がこっそり話されてます。

みく
みく

稼げる方だけに寄ると、ブランドの“顔”が薄れそうで不安…」

数字で見るサムスン——意外な現実

数字オタクの私としては財務状況が気になって調べました。意外な結果でした。

部門売上高(兆ウォン)営業利益(兆ウォン)主な製品
半導体81.515.2メモリなど
モバイル47.26.1Galaxy
家電16.81.3TVなど
ディスプレイ8.50.9OLED
ネットワーク6.30.55G基地局

これ見ると、サムスンって「半導体企業」なんですね。でも街で「サムスン」って聞いて思い浮かぶのはギャラクシーとかテレビじゃないですか?儲けの少ない部門が看板背負ってるんですよ。

矛盾してますよね。韓さんはその「看板」を作った人だった。

未完のAI革命——ビジョンはどこへ

一番気になるのが「SmartThingsによるAI家電革命」プロジェクト。

去年のCESで「AI for All」ってコンセプト発表してたじゃないですか。生活全部にAI入れるって。これ、韓さんの強い思いがあったらしいです。

「彼は『家電をサービスに変える』って言ってました」と家電部門の40代技術者。「冷蔵庫が食材だけ保存するんじゃなくて、あなたの健康状態や好みを理解して、食生活提案してくれる相棒になるって」

よくある話に聞こえるかも。でもサムスンってすごいのは「実行力」なんですよ。R&D施設見せてもらったんですけど、プロトタイプの完成度がマジですごかった。

例えば:

  • 冷蔵庫カメラが食材認識して期限管理
  • テレビが表情で気分読み取ってコンテンツ推薦
  • 洗濯機が服の素材判別して自動で洗い方選択

SF映画みたいだけど実際動いてるの!韓さんは2026年に市場投入する予定だった。この計画どうなるんでしょう?サムスン側は「予定通り」って言うけど、本当かなぁ。。。推進力なくなっちゃった感じします。

国民感情——「サムスン=韓国」の現実

「韓国はまだ企業国家だよ」

ソウル大学のパク准教授が言ってました。「GDPの2割がサムスン関連。就職人気トップ5のうち3つがサムスングループ。サムスンは会社じゃなくて国そのもの」

街の若者の反応も興味深かったです。

「私たちの将来はサムスンの調子で決まっちゃう感じ」って大学3年のキムさん(21)。「就職先としてはもちろん、韓国経済全体がサムスン頼み」

最初は大げさかなと思ったんですよ。でも考えたら、日本の若者って「トヨタの調子で将来決まる」なんて言わないですよね。韓国と日本の産業構造の違いを肌で感じました。

後継者問題——財閥の宿命

こういう重要人物を失う痛手は他の企業でも見られますよね。

企業喪失時の影響対策
アップルジョブズの死(2011)クック体制で多角化
ソフトバンク孫氏引退騒動(2023)後継者問題で株価下落
フォックスコン郭氏の政界転身安定に3年必要

サムスンの場合は特殊な問題があって。それが「財閥文化」。

韓国の財閥では創業家の意向が絶対なんです。表向きはちゃんとした経営体制あるけど、最終決定権は李会長にある。だから韓さんみたいな「実務の天才」が必要だったんですよ。

特に厄介なのが「長幼の序」の文化。年功序列がすごくて、若い人がいくら優秀でもある程度の年齢や経験ないとトップになれない。これがサムスンの組織改革の最大の壁だと思います。

これからどうなる?——船出した巨船

「大きな船は方向転換に時間がかかる」って漁師さん言ってました。

サムスンって巨大な船なんですよ。舵切るの時間かかる。しかも舵取り役の一人が突然いなくなった。

私が感じた課題はこんな感じ:

  1. 官僚主義がヤバい——組織デカすぎて決定遅い
  2. 家電・モバイル部門の士気低下——半導体ばっかり
  3. ソフトウェア弱い——ハードと比べると見劣り
  4. グローバル人材足りない——韓国中心主義から抜け出せない

特に4番目がヤバいと思う。役員ほぼ100%韓国人男性って。世界企業としては異例。アップルとかと比べると多様性なさすぎ。

韓さんは最近「サムスンをもっとオープンにしなきゃ」って言ってたらしい。留学経験ないけど英語上手で、外国人エンジニアと直接対話してた。この「開放性」どう継ぐかが鍵だと思う。

最後に見たこと——見えない遺産

昨日、葬儀場で待ってた。非公開の火葬で、家族だけの小さな式だったみたい。派手な公葬望まなかったのは本人の意思らしいです。

外では何百人もの社員が勝手に集まって、静かに祈ってました。30代前半の女性エンジニアが泣きながら話してくれた言葉が忘れられない。

「韓副会長はいつも『壁を作るな』って。部署の壁、役職の壁、国籍の壁。副会長なのに新人の発表会に来てくれたんです。彼がいなくなって、また壁の中に閉じこもるんじゃないかって」

この3日間で「サムスン帝国」ちょっとだけ中見えた気がする。巨大組織の固さと、それを壊そうとする人間ドラマ。韓さんって何を成し遂げて、何が残せなかったんだろう。

夜、江南の高層ビル見ながら考えてた。会社って結局は「人」だよなって。どんな立派な組織図あっても、動かすのは人間。

サムスンって超巨大企業の未来は、韓宗熙って「人」いなくなった今、どこ行くんだろう。

若手社員が韓副会長の訃報聞いたとき、こうつぶやいたんです。

「リーダーは死んでも、ビジョンは生き続ける」

本当にそうなるのか、これからも追いかけます。

<現場から、中村みく>

※2025年3月24〜26日、ソウル取材。発言者の一部は匿名。サムスン電子広報部からコメントはまだもらえてません。​​​​​​​​​​​​​​​​

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