私が初めて「2230兆円」という数字を目にしたとき、正直、頭がクラクラしました。これって何の数字かって?日本の家計金融資産です。2024年末についに達した、前代未聞の水準。この数字を見て、単純に「日本人って意外と金持ちなんだな」と思った方もいるかもしれません。でも待ってください。この数字の裏には、私たちの社会が抱える希望と矛盾が複雑に絡み合っているんです。
1. 「家計金融資産」って、結局何なの?
取材を始める前、私自身「家計金融資産ってなに?」という初歩的な疑問から出発しました。実際に金融庁や日銀の方々に話を聞く中で、以下のような構成要素があることがわかりました。
資産カテゴリ | 内容 | 主な特徴 |
---|---|---|
現金・預金 | 普通預金、定期預金、タンス預金など | 安全性は高いが利回りは低い |
株式 | 上場・非上場株式 | 価格変動リスクと高リターンの可能性 |
投資信託 | 株式や債券を組み合わせた運用商品 | 分散投資が可能で初心者にも人気 |
保険・年金準備金 | 生命保険、個人年金、企業年金 | 中長期的な資産形成に有効 |
債券・外貨・その他 | 国債、社債、外貨預金、暗号資産など | 高度な知識が必要な分野も多い |
取材中、ある40代の会社員の方が「投資信託を始めたけど、結局何に投資してるのかよくわからない」と話していました。多くの人がこの「わからなさ」を抱えている現実を目の当たりにして、この記事を書こうと決意したんです。
2. なぜ今、家計資産が急増したのか
「でも、不景気って言われてるのに、なんで資産が増えてるの?」
この素朴な疑問に答えるため、私は証券アナリストや経済学者への取材を重ねました。
株価上昇という追い風
「株価上昇の影響は絶大ですよ」
東京の証券会社で20年以上働く田中さん(仮名)はそう語ります。2024年2月、日経平均はバブル後の最高値を更新して3万9,000円台に到達。米国市場も史上最高値を更新する中、外国人投資家が日本株を買い漁る姿が印象的でした。
私自身、取材のため株式市場の様子を見に行った際、若い投資家たちの熱気に圧倒されました。「毎月5万円、コツコツ積立してます」という26歳の女性に出会ったときは、同世代として刺激を受けましたね。

株価って難しそうだけど、コツコツ勢が熱いかも!
新NISAという起爆剤
2024年から始まった新NISA制度。実はこれ、私も利用し始めたんです。
- 年間投資枠の拡大(一般:360万円、つみたて:120万円)
- 非課税期間の恒久化
- 生涯投資枠の導入(1,800万円)
- 商品ラインナップの透明性強化
「新NISAは若年層の参入障壁を一気に下げました」と語るのは、大手金融機関でNISA普及に取り組む村田さん(仮名)。「特に20代の口座開設数は前年比3倍です」。
私の周りでも「NISAデビュー」が流行語になるほど。先日、久しぶりに会った大学時代の友人たちとの飲み会では、投資の話で盛り上がりました。ファッションや恋愛の話題より、資産形成の話をする…これって時代の変化を象徴していると思います。
3. 歴史的視点:私たちはどこから来て、どこへ向かうのか
歴史は繰り返すと言いますが、家計金融資産の成長も例外ではありません。
年度 | 資産額(兆円) | 特記事項 | 私が見た社会の様子 |
---|---|---|---|
1997 | 1285.1 | 消費税5%時代へ突入 | 小学生だった私はバブル崩壊を知らず |
2000 | 1401.1 | ITバブル初期 | インターネットが家庭に普及し始めた頃 |
2007 | 1658.0 | バブル後の最初のピーク | 大学生活を楽しむ私。就職氷河期の話を先輩から聞く |
2009 | 1502.1 | リーマンショック直後 | 就活で「安定志向」が急増。私も公務員を考えた |
2013 | 1705.4 | アベノミクス開始 | 社会人3年目。周囲に「株を始めた」人が現れる |
2021 | 2042.3 | コロナ後の回復基調 | 在宅勤務で支出減。初めての投資信託を購入 |
2024 | 2230.3 | 過去最高更新 | 資産形成が日常会話に。この記事を執筆 |
取材先の日銀OBは「日本人の資産選択の変化は、社会不安と表裏一体です」と指摘します。私たちが貯蓄から投資へと向かうのは、単なる「お金持ちになりたい」という欲求だけでなく、「将来への不安」が背中を押しているのかもしれません。
4. 私たちはなぜこんなに預金が好きなのか?ーー国際比較の視点
海外取材で驚いたのは、アメリカ人の投資に対する自然な態度でした。
国 | 現金・預金比率 | 株式・投信比率 | 私が現地で感じたこと |
---|---|---|---|
日本 | 約50% | 約20% | 「リスクは取らない方がいい」という空気感 |
アメリカ | 約13% | 約54% | 「投資しないことがリスク」という考え方 |
ドイツ | 約30% | 約35% | 日本とアメリカの中間的な雰囲気 |
ニューヨークでインタビューした30代のケイトさんは「18歳で最初の給料をもらったとき、親が株を買うよう勧めてくれた」と語ります。対照的に、日本では「お金は銀行に預けるもの」という教えが根強い。
私自身、両親から「堅実に」という言葉を何度聞いたことか。そして今、私は自分の選択として投資を始めています。この変化は個人的なものではなく、社会全体の潮流なのでしょう。
5. 同じ日本人でも、世代によってこんなに違う
取材の中で最も衝撃を受けたのは、世代間の金融行動の違いでした。
年代 | 平均金融資産保有額 | 傾向 | 私が取材で感じたこと |
---|---|---|---|
20代 | 約180万円 | 現金中心、NISAデビュー層が増加 | 楽観的だが、将来への不安も大きい |
30代 | 約420万円 | 教育・住宅ローン重視、投資も増加傾向 | 私自身も含め、バランスに苦心する世代 |
40代 | 約750万円 | 貯蓄と運用のバランス型 | 投資のリテラシーに個人差が極端に大きい |
50代 | 約1200万円 | 退職準備でリスク回避型へシフト | 「失敗できない」プレッシャーを感じる世代 |
60代以上 | 約1600万円以上 | 資産を取り崩すフェーズに | 子や孫の将来を心配する姿が印象的 |
静岡県で会った24歳の派遣社員の女性は「毎月3万円をつみたてNISAに入れています。年金はあてにしてないので」と話します。一方、60代の元銀行員は「今さら株なんて怖くてできない」と。
同じ日本人なのに、まるで別の国の人のよう。私はこの取材を通じて、世代間のコミュニケーション不足を痛感しました。
6. 危険な格差拡大の兆候
「金融資産2230兆円」というキラキラした数字の陰で、私が最も懸念するのは格差問題です。
取材で得たショッキングなデータ:
- 上位10%の世帯が全体の約60%の金融資産を保有
- 投資リターンは高資産者ほど高い傾向
大阪のひとり親家庭を支援するNPOでボランティアをする中で、「投資どころか、明日の食費に困っている」家庭の現実を目の当たりにしました。彼らにとって「NISA」も「iDeCo」も、別世界の話なのです。
一方、都内の資産運用セミナーでは、すでに数千万円の資産を持つ人々が「効率的な運用方法」を真剣に学んでいました。
この差は何なのか。情報格差なのか、教育格差なのか、それとも単なる運の問題なのか。答えは一つではないでしょう。ただ、「頑張れば誰でも資産を増やせる」という単純な物語だけでは現実を捉えきれないと感じています。
7. 希望はあるのか?ーー政策と教育の可能性
暗い話ばかりではありません。取材を通じて、希望の芽も見つけました。
- 2022年から始まった中高生への金融教育
- 証券会社・銀行によるオンライン講座の爆発的増加
- 地域金融機関の投資サポートサービス
- 多言語化・やさしい日本語での投資情報提供
群馬県の公立中学校で行われている金融教育の授業を見学した際、13歳の生徒が「複利」について熱心に質問する姿に感動しました。私が中学生の頃、そんな言葉すら知りませんでした。
札幌市の地域金融機関では、高齢者向けの「はじめての投資信託」講座が大人気。80代の参加者が「孫と株の話ができるようになりたい」と語る姿が印象的でした。
こうした変化は、一見地味ですが、長期的には大きな社会変革につながる可能性を秘めています。
8. 2230兆円が問いかける私たちの未来
この長い取材の旅を通じて、「2230兆円」という数字の向こう側に見えてきたのは、日本社会の複雑な姿です。
- 若者の投資熱の高まりと、依然として強い現金志向
- 格差拡大の危険性と、それを是正しようとする政策
- 世代間の価値観の違いと、対話の必要性
私自身、この取材で多くの人と出会い、自分の価値観も揺さぶられました。「安全第一」と思っていた私が、少額からの投資を始めたのも、この数カ月の取材がきっかけです。
最後に、取材に応じてくれたある80代の男性の言葉を紹介します。
「お金は目的じゃない。手段だ。何のために増やすのか、常に考えなさい」
この言葉が、2230兆円という巨大な数字を考える上での、一つの指針になるのではないでしょうか。
私たちの社会が抱える課題は簡単には解決しませんが、一人ひとりが金融について考え、行動することで、未来は少しずつ変わっていくと信じています。そして私自身も、一人のジャーナリストとして、その変化を見つめ続けたいと思います。
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