こんにちは、21歳のルポライターかずみです。今回は私が最近取材を重ねてきた「公立中学校の制服無償化」について書きたいと思います。
教育現場の現状を取材するなかで、この制服無償化の動きが私の心を強く打ちました。なぜなら、私自身が中学生の頃、シングルマザーの母が制服代を工面するために残業を重ねていた姿を見てきたからです。
制服は「当たり前の存在」と思われがちですが、実はこの「当たり前」の裏には、多くの家庭の苦労と不安が隠れています。その現実と向き合い、変えようとする自治体の取り組みに、私は希望を感じています。
第1章:あなたの知らない「隠れ教育費」の重み
「義務教育は無償」—私たちは学校でそう教わってきました。でも、実際はどうでしょう?
先日、取材で会った佐藤さん(仮名・40代)は、中学生と小学生の2人の子を持つパート勤務の母親です。彼女はこう語りました。
「制服代だけで7万円近く。これに体操服、カバン、上履き…春になると家計が悲鳴をあげるんです。給食費や教材費も合わせると、毎月の食費より高くなることも。『無償の義務教育』なんて言葉に、正直腹が立ちます」
文部科学省の「子供の学習費調査(2021年度)」によると、公立中学生の保護者が年間で負担する費用は以下の通りです。
教育項目 | 公立中学校 年間平均費用(円) |
---|---|
学校教育費(制服・教材費・修学旅行など) | 132,976 |
学校給食費 | 43,584 |
学校外活動費(塾・習い事) | 201,964 |
合計 | 378,524円 |
出典元:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
この中でも特に最初の出費となる制服の負担は大きいです。私が複数の学校と販売店を回って調査した制服一式の平均価格は以下のとおり。
制服項目 | 平均価格(円) |
---|---|
冬用ブレザー | 15,000〜25,000 |
夏服シャツ・ブラウス(2枚) | 5,000〜8,000 |
スカート/ズボン | 10,000〜15,000 |
体操服・ジャージ上下 | 10,000〜13,000 |
上履き・通学バッグなど | 5,000〜8,000 |
合計 | 約45,000〜69,000円 |
出典元:ベネッセ教育総合研究所「入学準備と学用品費」および筆者調査
私が驚いたのは、この金額が地域によって大きくばらつきがあること。東京23区内の一部学校では、指定品すべて揃えると8万円を超えるケースもありました。
「子どもが成長するのに、1年で小さくなったブレザーを新調する余裕はない」「下の子に回すつもりで大事に取っておいたのに、制服が変わった」—そんな声を何度も聞きました。
第2章:制服無償化の波、全国に広がる
昨年、私が熊本県御船町を取材した時、ある教育委員会の方の言葉が心に刺さりました。
「子どもの教育の機会均等を考えたとき、制服代が足かせになっているのは明らかだった。小さな町だからこそできる政策として始めたんです」
実際、全国ではこの数年で制服無償化や補助制度を導入する自治体が増えています。私が取材した主要な事例を表にまとめました。
自治体名 | 開始年度 | 対象 | 内容 |
---|---|---|---|
東京都品川区 | 2026年度〜 | 区立中学新入生全員 | 制服一式を無償支給 |
熊本県御船町 | 2025年度〜 | 小学6年生 | 制服(冬夏)を無償提供 |
北海道十勝地方 | 2019年〜 | 希望者 | 制服レンタル制度(年額14,000円前後) |
福岡県直方市 | 2023年度〜 | 中学新入生 | 制服購入費を上限35,000円まで補助 |
出典元:
私が品川区の担当者に取材したところ、「財政的には決して楽な決断ではなかったが、子育て世代の実質的な支援として効果的」との説明がありました。
地方では少子化対策の一環として、都市部では教育格差の解消策として、それぞれ異なる文脈で進められている点が興味深いです。
第3章:私が見た「制服無償化」がもたらす3つの効果
ここまで取材を進めるうちに、制服無償化には単なる家計支援以上の意味があると気づきました。
1. 目に見えない「貧困の壁」を取り除く
「制服が買えないから転校を断念した」という衝撃的な話を、大阪の教員から聞きました。実際、子どもたちの間では「古い制服」「サイズが合わない制服」がいじめの原因になることも。
私は都内の中学校で生徒たちに匿名アンケートを実施しました。すると、約15%の生徒が「制服の状態で家庭の経済状況を判断した経験がある」と回答。制服は思った以上に「見えない壁」を作り出していたのです。
2. 地方創生と少子化対策の意外な切り札に
「子育て世代に選ばれる自治体になりたい」—北海道のある町長はそう語りました。実際、制服無償化を実施した自治体では、わずかながら転入増加の傾向も見られます。
熊本県御船町では、無償化発表後に「子育て環境が良い」という理由での問い合わせが増えたそうです。数万円の支援とはいえ、「行政が子育てに本気で向き合っている」という強いメッセージになるのです。
3. 環境問題とつながる可能性
意外だったのは、制服無償化が環境問題とも結びついていること。長野県のある自治体では、無償化と同時に制服リサイクルシステムを構築。使わなくなった制服を回収・クリーニングし、希望者に提供しています。
「新品至上主義からの脱却」という視点で、SDGsにも適合する取り組みになっていました。
個人的に私が一番感動したのは、ある生徒の言葉です。「みんな同じ制服を着ているから、お金持ちも、そうでない家も関係ない。それが学校の良いところ」。この素直な感想に、制服無償化の本質があると感じました。

“みんな同じ制服だから関係ない”って…
子どもの一言に全部詰まってる気がした
第4章:解決すべき課題—理想と現実の溝

正直に言います。取材を進めるうちに、制服無償化には課題も多いことがわかってきました。
財源問題—「誰が」「いつまで」払い続けるのか
ある自治体の財政担当者は内緒話として教えてくれました。「来年度の選挙を見据えた『バラマキ』と批判する声もある。持続可能な制度設計が課題です」
確かに、1,000人規模の中学校で全生徒の制服を無償化すると、5,000万円前後の予算が必要。この財源をどう確保し続けるかは、各自治体の頭痛の種になっています。
公平性の線引きが難しい
「私立中学は対象外なのか」「制服は無料でも体操服は有料なのか」—東京都内の保護者グループとの懇談会では、こうした疑問が次々と上がりました。
特に、「生活保護世帯だけ」「第3子以降だけ」といった部分的支援の場合、対象家庭のスティグマ(烙印)につながる懸念もあります。
制服の品質と選定プロセス
「無償だからと粗悪品を支給されても困る」という声も。品川区では、この点を考慮し、生徒や保護者を交えたデザイン選定委員会を設置。値段と品質のバランスに配慮しているそうです。
個人的に疑問だったのは、制服メーカーとの利権構造。無償化によって特定業者が独占的に受注する状況は避けるべきでしょう。
第5章:制服無償化の未来形—私が感じた可能性
取材を進めるうちに、制服無償化の「次の形」が見えてきました。
サブスク制服という選択肢
北海道十勝地方で導入されている「制服サブスクリプション」。月額1,000〜1,500円で制服をレンタルし、成長に合わせて交換できるシステムです。
「購入よりレンタル」の発想は、私にとって目から鱗でした。「所有」から「利用」へのシフトは、若い世代の価値観とも合致しています。
官民連携の可能性
愛知県のある自治体では、地元企業との連携で制服リユースバンクを設立。企業側は「SDGs活動」として参加し、学校と家庭をつなぐ役割を果たしています。
このように、公的支援だけでなく、企業や地域社会を巻き込むモデルは持続可能性の面でも優れていると感じました。
制服そのものを見直す機会に
「そもそも制服は必要?」という根本的な問いも各地で聞かれます。実際、制服のない公立中学も増えています。
しかし私は、取材を通じて制服には「アイデンティティの形成」「経済格差の顕在化防止」という意義も感じました。無償化議論を通じて、制服の在り方そのものを見直す良い機会になっているのです。

“制服は必要か”って問い直すことで、
逆に“なぜ大事か”が見えてくる気がした
まとめ:教育の公平性を考える出発点として
この記事を書くにあたり、全国20か所以上の学校や自治体を回りました。そこで見えてきたのは、「制服無償化」が単なる家計支援策ではなく、教育の公平性や地域社会のあり方を問う大きなテーマだということです。
私自身、中学時代に感じた「制服を買う負担」が、こんな形で社会問題として議論されるようになったことに感慨深いものがあります。
最後に、ある教育委員会の方の言葉を紹介して終わりたいと思います。
「子どもたちが『生まれた家庭』ではなく『その子自身の可能性』で未来を切り開ける社会。制服無償化はそのための小さな一歩です」
この問題を自分のこととして考えてみてください。あなたなら、どんな制度が理想だと思いますか?
全国で増え始めた公立中学制服の無償化 平均5万円、家計を圧迫する「隠れ教育費」にメス
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