地下鉄サリン事件から30年。あの日の恐怖を覚えている人がいる一方で、事件を知らない世代が増えている。そんな中、オウム真理教の後継団体「Aleph(アレフ)」などへの若者の入信が続いていることをご存知だろうか。
公安調査庁の最新の報告によれば、過去10年間で新たに入信した860人以上のうち、なんと20代以下の若者が52%を占めているという。この数字を見て、正直ゾッとした。私たちは歴史から何も学んでいないのだろうか。
オウム後継団体とは何か
オウム真理教は1995年の地下鉄サリン事件後に解散したが、その後継団体は活動を続けている。主な団体は次の通りだ。
団体名 | 設立年 | 主な活動 | 公安庁の監視対象 |
---|---|---|---|
Aleph | 2000年 | ヨガ・心理学講座、宗教活動 | 監視対象 |
ひかりの輪 | 2007年 | 哲学・宗教セミナー | 監視対象 |
山田らの集団 | 2006年 | 信仰・修行活動 | 監視対象 |
特にAlephは松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚の影響が強く残っているといわれる。公安調査庁の監視下にありながらも、新しい信者を獲得し続けているという現実。これは見過ごせない問題だと思う。
事件を知らない世代の増加
「オウム?サリン事件?何それ?」
こんな会話を耳にしたことはないだろうか。事件から30年が経ち、事件をリアルタイムで知らない世代が社会の中心になりつつある。データを見ても明らかだ。
年代 | 新規入信者数 | 20代以下の割合 |
---|---|---|
2014年~2018年 | 約400人 | 45% |
2019年~2023年 | 約460人 | 52% |
新規入信者のうち、20代以下の若者の割合が5年間で7%も増えている。この数字を見て、私は危機感を覚えずにはいられない。
先日、都内の大学で学生たちに話を聞く機会があった。「オウム事件は知ってる?」と質問すると、「名前は聞いたことある」という程度の認識の学生が多かった。歴史の教科書で少し触れる程度で、詳しくは学んでいないという。
若者を狙う巧妙な勧誘手法
では、オウム後継団体はどのようにして若者を勧誘しているのか。調査によると、次のような段階を踏んで勧誘が行われているという。
段階 | 方法 | 内容 |
---|---|---|
① 興味を引く | SNS・街頭勧誘 | ヨガや心理学講座を案内 |
② 参加 | セミナー | 自己啓発や精神修行を強調 |
③ 信頼を構築 | 勉強会 | 「事件は陰謀」と説明 |
④ 洗脳 | 入信 | 本格的な修行・信仰 |
最初はヨガや心理学といった一般的な内容で興味を引き、徐々に教団の教えへと誘導していく。特に注目すべきは③の段階だ。「オウム事件は国家による陰謀だった」などと説明し、歴史の真相を教えるかのように振る舞うのだ。
実際に元信者Aさん(25歳・仮名)は「最初は自分探しのためのヨガだと思っていた」と語る。「でも、いつの間にか『あの事件は誤報だった』と信じるようになっていた」
若者が惹かれる理由
なぜ若者たちはオウム後継団体に惹かれるのか。その心理的要因は複雑だ。
主な理由 | 詳細 |
---|---|
社会不安 | 仕事や将来に悩む若者が多い |
精神的な支え | 「悟り」や「成長」を求める |
陰謀論への興味 | 教団の歴史を知らずに騙される |
SNSの影響 | カルト情報が拡散しやすい |
私が取材した学生Bさんは「将来への不安から、何か確固とした信念を持ちたかった」と話す。「SNSで見つけたヨガの講座が、心の安定に繋がると思った」という。しかし、それがオウム後継団体への入り口だったことに、後から気づいたという。
コロナ禍以降、若者の孤独感は深まっている。そんな中、「仲間がいる」「答えがある」と思わせる団体の誘いは魅力的に映るのだろう。
対策は十分か
このような状況に対して、どのような対策が必要だろうか。
対策 | 内容 |
---|---|
教育の充実 | 学校教育でオウム事件の歴史を伝える |
SNSでの警告 | 政府・NPOが若者向けに注意喚起 |
法的規制の強化 | 公安調査庁の監視を強化 |
しかし、現状では対策が十分とは言えない。学校教育では時間的制約もあり、オウム事件について詳しく学ぶ機会は限られている。また、SNSでの情報は玉石混交であり、むしろカルト側の情報発信力の方が強いケースもある。
あるカルト研究者は「団体側の勧誘手法は巧妙化している一方で、社会の警戒心は薄れている」と警鐘を鳴らす。「事件の風化を防ぐ取り組みが急務だ」という。
個人的には、SNS上での積極的な情報発信が必要だと感じる。若者が日常的に触れるプラットフォームで、わかりやすく危険性を伝えることが重要なのではないだろうか。
忘れてはならない歴史
地下鉄サリン事件は13人の命を奪い、6,000人以上が負傷した。被害者やその家族の苦しみは今も続いている。その事実を忘れてはならない。
事件を知らない世代が増える中、私たち一人ひとりが歴史を伝えていく責任がある。親から子へ、教師から生徒へ、先輩から後輩へ。
オウム後継団体への若者の入信が途絶えないという現実は、私たち社会への警告だ。歴史から目を背けると、同じ過ちを繰り返す。そう思うと、背筋が寒くなる。
「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」というドイツの格言がある。今こそ、この言葉を思い出すべき時なのかもしれない。
(本記事は関係機関の情報および独自取材に基づいて作成しています)
オウム後継、若者入信途絶えず 事件後に生まれた世代が半数―地下鉄サリン30年
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