フィンランドのデジタル教育、紙の教科書復活へ──デジタル学習の落とし穴とは

時事

「教育先進国」として知られるフィンランドで、デジタル教育の弊害が顕著になりつつある。タブレット端末を導入し、ペーパーレス学習を進めた結果、学力の低下や生徒の心身の不調が問題となり、紙の教科書を復活させる動きが広がっている。

デジタル化による教育の変化は世界的なトレンドだが、フィンランドの例は「本当にデジタル教育だけでいいのか?」と改めて考えさせるものだ。今回は、デジタル学習の落とし穴と紙の教科書が復活する背景を深掘りしてみたい。

デジタル教育の理想と現実

フィンランドがデジタル教育に力を入れ始めたのは2010年代。タブレット端末を導入し、電子教科書を活用することで「学習の個別最適化」や「紙資源の削減」を目指した。

当初は、教育のデジタル化に期待が寄せられた。デジタル機器を活用すれば、生徒一人ひとりの理解度に合わせた学習が可能になり、視覚的な教材を通じて直感的に学べるようになる。

理想としては素晴らしい。だが、実際には予想外の問題が次々と浮上してきた。

学力の低下

国際学力調査(PISA)のデータによると、フィンランドの読解力スコアは2010年代後半から下降傾向にある。

フィンランドの読解力スコア
2009年536点
2015年526点
2021年520点

デジタル教材では、長文をじっくり読む機会が減少する。スクロールして読むスタイルに慣れると、文章の構造を把握しにくくなり、情報の整理が難しくなる。

これ、個人的にも実感する部分がある。スマホで記事を読むのと、本でじっくり読むのでは理解の深さが違う気がしないだろうか? フィンランドの生徒も、同じような感覚を持っているのかもしれない。

集中力の低下

もう一つの問題は「集中力の低下」だ。タブレット学習が進むにつれて、生徒たちはSNSやゲームの誘惑にさらされる時間が増えた。特に低年齢の子どもほど、目の前の学習よりも「タブレット=遊び」という意識を持ちやすい。

集中力の低下の要因影響
SNSの通知学習中に気が散る
ゲームアプリの存在勉強より遊びを優先しがち
マルチタスクの増加学習の質が下がる

「タブレットを使って勉強していたはずが、いつの間にか別のアプリを開いていた」なんてこと、実際によくある話だ。

心身の健康問題

デジタル教育が進むにつれ、生徒たちの健康にも影響が出てきた。

影響内容
視力の低下長時間の画面視聴が視力に悪影響を与える
睡眠障害夜遅くまでの使用が睡眠の質を低下させる
運動不足机に座る時間が長くなり、運動習慣が減少

画面のブルーライトが睡眠に悪影響を与えることはよく知られているが、それが学校教育にまで影響を与えているとなると、問題はかなり深刻だ。

フィンランドで紙の教科書が復活

こうした問題を受けて、フィンランドの一部の学校では「紙の教科書を復活させる」動きが加速している。

教師の声

   •   「紙の教科書の方が、生徒の集中力が持続する」

   •   「デジタル教材では学習の流れを把握しにくい」

生徒の声

   •   「紙の本の方が記憶に残りやすい」

   •   「デジタルよりも目が疲れにくく、学習がはかどる」

やっぱり、紙には紙の良さがある。ページをめくることで「ここまで読んだ」と実感できるし、教科書に書き込みをしながら学ぶこともできる。

日本はこの教訓を活かせるか?

日本もGIGAスクール構想のもと、デジタル教育を急速に推進している。しかし、フィンランドの事例を見ると「デジタルだけが正解ではない」ということがよく分かる。

課題日本で考えられる対策
デジタル依存のリスク紙の教科書と併用する
生徒の集中力低下授業中の端末使用ルールを厳格化
健康問題画面使用時間の制限を検討

個人的には、紙の教科書とデジタル教材を「使い分ける」形がベストだと思う。例えば、計算問題や漢字の練習は紙のノートで、調べ学習やプログラミングはデジタルで──そんなハイブリッド型が理想的ではないだろうか。

まとめ──バランスが大事

フィンランドは「デジタル教育の先進国」として注目を集めたが、その裏で思わぬ問題が発生していた。学力の低下、集中力の減少、心身の不調──これらを受けて、紙の教科書を復活させる動きが進んでいる。

日本も同じ轍を踏まないために、フィンランドの経験から学ぶべきことは多いはずだ。デジタルとアナログ、それぞれのメリットを活かした「バランスの取れた教育」が、これからの時代に求められているのではないか。

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デジタル導入の「教育先進国」で成績低下や心身の不調が顕在化…フィンランド、紙の教科書復活「歓迎」

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