2024年、従業員の退職が主な要因となった企業の倒産が87件に達した。前年の67件から約3割増という異例の増加で、過去最多を記録した。特に中小企業にとっては、経営リスクの新たな火種となっている。
なぜここまで退職による倒産が増えたのか。そして、企業はどのように対策を打つべきなのか。本記事では、業種別の状況や背景を掘り下げ、企業が生き残るための道筋を考えていく。
退職が倒産につながる背景
「人が辞めるくらいで会社が潰れるのか？」と思う人もいるかもしれない。だが、実際に中小企業では、たった数人の退職が命取りになるケースが増えている。
人手不足が深刻化
どの業界でも人手不足が叫ばれて久しいが、特に地方や中小企業における人材確保は、もはや「奪い合い」と言ってもいい。求人を出しても応募はほぼゼロ。大企業に比べて待遇が見劣りする企業では、今いる従業員の流出を防ぐのも一苦労だ。
賃上げプレッシャーが経営を圧迫
2024年に入り、物価の上昇がさらに加速した。必然的に従業員の賃上げ要求も強まるが、中小企業は利益率が低く、大幅な給与アップは難しい。結果として、より高い給与を提示する大企業や外資系企業に人材を奪われる悪循環が起きている。
過重労働とモチベーション低下
人手不足が進むほど、残された従業員の負担は増していく。長時間労働が常態化し、休日もろくに取れない。これでは心身ともに疲弊し、退職を考えるのも無理はない。
倒産が多発している業種
退職による倒産リスクが特に高い業種を見ていこう。
| 業種 | 倒産の主な要因 |
|---|---|
| 建設業 | 熟練労働者の高齢化と若手不足。公共工事の減少、資材費高騰も追い打ち。 |
| 福祉・介護業界 | 低賃金・過重労働で離職率が高い。施設の運営が成り立たなくなるケースが増加。 |
| IT業界 | 技術者の流動性が高く、大手や外資に転職する人が続出。プロジェクトの遅延や品質低下が発生。 |
どの業界も共通しているのは「人がいなければ回らない」という点だ。特に、専門知識や経験が必要な業種では、一度人が辞めると代わりを見つけるのが非常に難しい。
企業が取るべき対策
このまま手をこまねいていては、次々と企業が淘汰されるのは明らかだ。では、企業はどんな対策を講じるべきなのか。
| 対策 | 具体策 |
|---|---|
| 労働環境の見直し | フレックスタイム制やリモートワークを導入し、働きやすい環境を整備する。 |
| 賃金水準の改善 | 政府の補助金・助成金を活用しながら、給与を適正な水準に引き上げる。 |
| 人材育成の強化 | 資格取得支援や外国人労働者の受け入れなど、多角的な人材戦略を展開する。 |
| 採用手法の多様化 | SNSやオンライン採用を活用し、これまでアプローチできなかった層にもリーチする。 |
もはや「人が来るのを待つ」時代ではない。企業側が本気で動かない限り、人材不足は解決しない。
まとめ
2024年、退職による倒産が過去最多を記録した。特に中小企業にとって、労働環境の改善や賃金水準の見直しは避けて通れない課題となっている。
厳しい状況だからこそ、企業は今こそ変わるべきだ。時代に合わせた働き方の提供、人材の確保と定着。これらに真剣に取り組むことができるかどうかが、生き残りのカギを握っている。
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