はじめに:突然の現金給付案、その真意は?
今月に入って急に浮上してきた「国民全員への現金給付」のニュース。正直、最初は「また選挙目当てか」と思ったのは私だけじゃないはず。でも実際のところ、この4〜5万円給付案には、単なるバラマキ以上の背景があるみたいだ。
取材を進めていくうちに見えてきたのは、予想以上に深刻な経済状況と、それに対する政府の焦りだった。コロナ時の10万円給付以来の大型給付になるかもしれないこの政策、私なりに徹底的に掘り下げてみた。
「国難」という言葉が飛び出す経済状況
昨日、政府関係者から聞いた話では、この給付の最大の理由は単なる「物価高対策」ではないという。確かに物価は上がり続けているけど、それだけなら去年にもやっていたはず。
実は、裏にはもっと根深い問題がある。
第一に、アメリカの関税政策の転換だ。トランプ政権が中国に課した新たな関税が、日本経済にも波及する恐れが出てきた。特に自動車や電子部品など、日本の主要輸出品への影響は避けられない見通しだ。
「石破首相は状況を『国難』と表現しています。給付の決断はそのくらい切迫した判断なんです」
財務省の中堅官僚はそう語る。私が「選挙対策では?」と問いかけると、「もちろんそういう見方もありますが、それ以上に経済の先行きへの不安が大きい」と返ってきた。
給付の中身は?誰がいつもらえるのか
現在判明している情報によると、給付の概要はこんな感じだ。
- 対象:住民基本台帳に載っている国民全員
- 金額:1人あたり4〜5万円(最終調整中)
- 条件:所得制限なし
- 支給時期:6月下旬から7月にかけて
- 申請方法:マイナンバーと紐づけた口座への振込が基本
ちなみに私も取材の途中で気になったのが「非正規で住所不定の人たちはどうなるの?」ということ。この点について厚労省に問い合わせたところ、「検討中」との回答。コロナ時の給付でも同様の問題が発生していたが、今回も課題として残りそうだ。
コロナ時の10万円とどう違う?
2020年のあの10万円は忘れられない。当時大学生だった私も、バイトが激減していた時期に本当に助かった記憶がある。
今回の給付はどこが違うのか?
「スピード重視」というのが一番の違いだろう。コロナ時の給付は申請から実際に振り込まれるまで、地域によっては3ヶ月以上かかった。今回は最短1ヶ月での支給を目指しているという。
一方で金額は半分以下。これは財政が厳しい中での苦肉の策だ。総務省の関係者は「本当は10万円が理想だったが、財政的に無理があった」と漏らしていた。
さらに、地方自治体が独自に上乗せする動きも出てきている。大阪府は「府内在住者に追加で1万円」を検討中と聞いた。自治体による格差が出そうな気配もある。
6兆円の巨額支出、その財源は?
単純計算で約6兆円。この巨額の資金はどこから出てくるのか?これが最大の焦点だろう。
「結局は国債発行になります」
財政に詳しい専門家はこう言い切る。「補正予算で対応」と言われているが、それは単に「通常の予算とは別で組む」という意味で、実質的には国の借金が増えることになる。
個人的に不思議だったのは、緊縮財政を掲げる石破政権がなぜこのタイミングで大盤振る舞いをするのか、という点。ある政治アナリストは「選挙を睨んだ政策転換」と見ているが、私はむしろ本当に経済状況が危機的なのではと感じている。
私たちの暮らしは良くなる?
率直なところ、4〜5万円では生活が劇的に改善するわけではない。ただ、ガソリン代や食費の高騰に苦しむ世帯には、一時的とはいえ助けになるだろう。
私の周囲で聞いた声では:
「光熱費の支払いに充てる」(30代会社員)
「子どもの習い事の費用に使いたい」(40代主婦)
「貯金する。次はいつ給付があるかわからないから」(20代フリーター)
興味深いのは、「使う」より「貯金する」という声が多かったこと。これは消費喚起という目的からすれば、あまり効果が期待できないかもしれない。
また、年収1000万円の人も、生活保護受給者も同じ金額というのは、本当に公平なのだろうか?この点は国会でも議論になりそうだ。
これからのスケジュールと注目点
今のところ、予定されている流れはこんな感じだ。
4月末:補正予算案の閣議決定
5月中:国会審議
6月初旬:補正予算成立
6月下旬〜7月:給付開始
だが実際には、国会での攻防次第では遅れる可能性もある。野党は「選挙目当てのバラマキだ」と批判する構えだし、「所得制限を設けるべき」という修正案も出されるかもしれない。
個人的に気になるのは、マイナンバーカードを持っていない人への給付方法。高齢者を中心に、まだ取得していない人も多い。「デジタル弱者が取り残されないか」は重要なポイントだ。
おわりに:一時的な支援の先に見えるもの
正直言って、4〜5万円の給付で日本経済が劇的に回復するとは思えない。一時的な痛み止めに過ぎないのは明らかだ。
それでも、今苦しんでいる人たちにとっては、わずかでも助けになる。バラマキと批判するのは簡単だが、今この瞬間に支援を必要としている人がいることも事実だ。
ただ、その先の展望も示さなければ意味がない。「給付の先にある経済成長戦略」が見えないのは大きな課題だと感じる。
そして何より、こうした巨額の支出が「将来世代の負担」になるという事実から目を背けるべきではないだろう。私たち若い世代にとっては、目先の給付金よりも、持続可能な社会保障や経済の仕組みづくりの方が、実は切実な問題なのだから。
(取材・文 かずみ)
国民全員に現金給付を検討、4万~5万円の案 政府・与党が調整
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