先週、都内某所で開かれたベンチャー関連のイベントに参加した。そこで耳にしたのが、次世代電池開発の最有力企業と目されていたAPB社の暗いニュースだった。同社が全従業員に対しリストラを通告したというのだ。
「一人の知人が泣きながら電話してきて。『明日から来なくていい』って言われたって」と、業界関係者は私に語った。その表情には怒りと悲しみが入り混じっていた。
「全樹脂電池」という革命児の挫折
APB社と言えば、金属部品を樹脂に置き換えた画期的な「全樹脂電池」の開発で急速に名を馳せた企業だ。この技術が注目された理由は明快だった。従来のリチウムイオン電池と比べて発火リスクが大幅に低減され、さらに量産性にも優れていたからだ。
業界内では「日本発の本当のイノベーション」と評価する声も多かった。正直、取材を始めた当初の私は半信半疑だった。だが、複数の専門家に話を聞くうちに、この技術が本物である可能性を強く感じるようになった。
それなのになぜ。
見えない敵との闘い
「資金繰りが原因だろうな」
ある投資家は吐き捨てるように言った。APB社の技術力は世界レベルだったが、資金調達の面では苦戦していたという。
「日本のベンチャー環境の限界だよ。技術は一級品なのに、それを支える資金のエコシステムが弱すぎる」
もう一人の関係者は、競争環境の激化も指摘した。
「海外勢はすごい勢いで開発を進めている。中国や韓国の企業は国家ぐるみのバックアップもある。個人的には、APB社の技術は最高レベルだったと思うけど、開発スピードと資金力の差は埋められなかったんじゃないかな」
失われるものは何か
この事態がもたらす影響は小さくない。
影響 | 詳細 |
---|---|
技術の消失 | APB社の開発データや特許技術が失われる可能性があり、日本の電池開発分野にとって大きな損失になる。 |
従業員の転職問題 | 優秀なエンジニアや研究者が職を失い、業界全体の技術力が流出する懸念がある。 |
海外企業への技術流出 | 仮にAPB社の技術が海外企業に買収されれば、日本国内での競争力が低下する恐れがある。 |
取材を進めるうちに、最も懸念されるのは技術の流出だと感じた。過去にもエルピーダメモリの事例など、日本の技術が海外に流出するケースは少なくない。APB社の場合も同様のパターンを辿るのだろうか。それとも…。
問われる日本の技術力保存能力
「どうして日本の技術って守れないんだろう」
取材中、そんな思いが何度も頭をよぎった。技術はあるのに、それを守り育てる体制が弱い。これは私が取材してきた多くの日本企業に共通する問題だ。
この問題を解決するために必要なのは、次のような対策ではないだろうか。
課題 | 解決策 |
---|---|
官民連携による支援強化 | 政府や大手企業が連携し、技術力のあるベンチャー企業への支援を拡充する必要がある。 |
知的財産の保護 | 重要な技術や開発データが流出しないよう、適切な管理体制を構築することが求められる。 |
資金調達の多様化 | 国内外の投資家やクラウドファンディングを活用し、持続可能な資金調達手段を確保することが重要だ。 |
正直なところ、この問題に簡単な解決策はない。それでも私は、日本の技術力は世界に誇れるものだと思っている。もっと社会全体でベンチャー企業を支える仕組みを整えなければ、と強く感じる。
敗北か、それとも再起のチャンスか
取材の最後に、APB社の元技術者に話を聞くことができた。
「悔しいけど、まだ諦めていません。別の形でこの技術を世に出す道を探しています」
その言葉に、わずかな希望を見出した気がした。技術は人に宿る。制度や環境が整えば、いつか必ず花開く可能性がある。
私はこれからも、APB社と「全樹脂電池」の行方を追い続けるつもりだ。そして、日本の技術力が正当に評価される社会の実現に、少しでも貢献できればと思う。

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