新型コロナ再流行か、新変異株「ニンバス」拡大中… 喉の激痛・高齢者の重症化に要注意
この記事を読んでわかること
- 新型コロナ変異株「ニンバス(NB.1.8.1)」の正確な情報と特徴
- 現在の感染状況と医学的評価
- 症状の実態と重症化リスクの現状
- 家族を守るための具体的な対策
こんにちは、ルポライターのみくです。
2025年8月のお盆明け、私の周りでも「喉がガラスみたいに痛い」「38度の熱が出た」という話を立て続けに聞くようになりました。調べてみると、現在「ニンバス(NB.1.8.1)」と呼ばれる新型コロナの変異株が流行の中心となっていることがわかりました。
今回は、厚生労働省や世界保健機関(WHO)などの公式データ、医療現場の実際の声を元に、この変異株の実態をお伝えします。
【現状把握】2025年8月、感染者数は8週連続で増加中
厚生労働省の公式発表によると、2025年第32週(8月4日~10日)の新型コロナウイルスの1医療機関あたりの患者数は6.13人で、前週の5.53人から増加し、8週連続で増加しています。
私が都内の内科クリニックに取材した際、院長は「7月後半から明らかに患者さんが増えている。特に『喉が痛い』という訴えで来院される方が目立つ」と話していました。
ただし、厚生労働省のデータを見ると、2024年の同じ時期の患者数は10.5人だったため、前年と比べれば感染者数は少ない状況です。
ニンバス株(NB.1.8.1)とは何か?
ニンバス(NB.1.8.1)は、オミクロン変異株から派生した組み換えウイルスです。正確には、JN.1系統から派生した下位変異株で、2025年1月に初めて検出されました。
「ニンバス(Nimbus)」という名称は、「雨雲」を意味するラテン語から来ており、カナダの進化生物学者T. Ryan Gregory教授によって命名されました。これは正式名称のNB.1.8.1よりも覚えやすく、特定の地域への偏見を避けるための通称です。
世界保健機関(WHO)は、2025年5月23日にNB.1.8.1を「監視下の変異株(Variant Under Monitoring:VUM)」に指定しています。これは継続的な監視が必要な変異株という意味です。
感染状況の実態
国内の状況
埼玉県のゲノムサーベイランスデータによると、2025年5月以降、それまで主流だったXEC系統に代わってNB.1.8.1系統が検出されるようになり、特に7月以降はNB.1.8.1の子孫株(PQ.2など)の検出が増加しています。
世界の状況
WHOの最新報告(2025年5月時点)では、NB.1.8.1は世界全体のCOVID-19症例の10.7%を占めており、4週間前の2.5%から大幅に増加しています。22カ国で検出されており、アジア地域では特に中国、インド、台湾などで拡大が報告されています。
症状の実態:「カミソリのような痛み」は本当か?
メディアでよく報じられる「カミソリを飲み込んだような喉の痛み」について、実際の医療現場の声を聞いてみました。
一之江駅前ひまわり医院の150例の分析によると、「よくニュースでは『カミソリの刃』のような強烈な喉の痛みが言われていますが、当院ではそこまで『カミソリの刃』のようなのどの痛みだけを経験するものではありません」とされています。
主な症状
- 発熱(38度以上の高熱)
- 喉の痛み(従来株より強い傾向)
- 咳・痰
- 倦怠感
- 鼻水・鼻づまり
- 頭痛・関節痛
一部では消化器系の症状(嘔吐、下痢など)も報告されていますが、症状は他のCOVID-19変異株と基本的に類似しています。
重症化リスクは高いのか?
これが最も重要な点ですが、複数の信頼できる情報源が一致した見解を示しています。
WHO(世界保健機関)の評価
WHOは明確に「NB.1.8.1が疾患重症度の増加とは関連しない」「他の循環している変異株と比較して追加的な公衆衛生リスクをもたらすものではない」と述べています。
ECDC(欧州疾病予防管理センター)の評価
ECDCも「NB.1.8.1は他の最近流行しているオミクロン系統のSARS-CoV-2変異株と比較して、公衆衛生への増大したリスクを引き起こすことは予想されない」と評価しています。
医学文献での評価
The Lancet Infectious Diseasesに掲載された研究でも、重症化率や致死率の増加を示すデータは報告されていません。
ワクチンや治療薬の効果
ワクチン効果
WHO技術諮問委員会は、「JN.1またはKP.2系統を標的とした1価ワクチンが引き続き適切」「LP.8.1系統を標的としたワクチンも適切な代替手段」と評価しており、既存ワクチンの重症化予防効果は維持されると考えられています。
治療薬
「ニンバス(NB.1.8.1株)」が主要な抗ウイルス治療薬に対して耐性を持つことを示唆するエビデンスはありません。特に、ニルマトレルビル/リトナビル(パクスロビッド)については、有効性を維持するとWHOが報告しています。
家庭でできる対策
基本的な感染対策
これまでのコロナ対策と変わりません:
- 手洗い・消毒の徹底
- 適切なマスクの着用(特に人混みや換気の悪い場所)
- 換気の改善
- 体調不良時の外出自粛
喉の痛みに対する対処法
- 解熱鎮痛剤の使用(イブプロフェンやアセトアミノフェン)
- うがい薬の使用
- 加湿器で湿度を保つ
- 冷たい飲み物で喉を冷やす
- 十分な休息
医療機関受診の目安
以下の症状がある場合は早めの受診を:
- 38度以上の発熱が続く
- 水分摂取が困難なほどの喉の痛み
- 呼吸困難や胸の痛み
- 意識レベルの低下
特に以下の方は重症化リスクが高いため、早期の相談が重要です:
- 65歳以上の高齢者
- 基礎疾患(糖尿病、心疾患、慢性腎臓病など)がある人
- 妊娠中の女性
- 免疫抑制状態にある人
今後の見通し
過去のデータを見ると、新型コロナの夏場の流行は9月初旬から中旬ごろまで続く傾向があります。ただし、2020年の初期や2022年のオミクロン大流行時のような医療体制の逼迫は起きていません。
台湾の例では、NB.1.8.1による感染拡大があったものの、「過去の感染拡大とは異なり、今回の感染拡大は医療システムを崩壊させるほどの深刻な事態にはならないと予想されている」とされています。
まとめ:冷静な対応が一番大切
今回の調査でわかったのは、ニンバス株は確かに感染力が高く、喉の痛みが特徴的な症状として報告されているものの、重症化リスクは従来株と変わらず、適切な対策で対応可能だということです。
重要なポイント:
- WHO、ECDC、医学文献すべてで「重症化リスクの増加なし」が確認済み
- 既存ワクチンの重症化予防効果は維持
- 治療薬も引き続き有効
- 基本的な感染対策は変わらず
私たちはコロナという感染症について多くの経験を積んできました。その知識と、確立された医療体制を活かしながら、必要以上に恐れることなく、適切な対策を続けることが大切です。
この記事を読んで分かったことと考えるべきこと
- 科学的事実: 複数の国際機関が重症化リスクの増加を否定
- 症状の実態: 特徴的な喉の痛みはあるが、医療現場では過度ではない
- 対策の有効性: 既存のワクチン・治療薬・感染対策が引き続き有効
- 情報の重要性: 公式データに基づく冷静な判断が必要
- 医療体制: 検査・治療体制は整っており、過度な心配は不要
情報源
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況)2025年」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00474.html - World Health Organization「Risk evaluation for SARS-CoV-2 Variant Under Monitoring: NB.1.8.1」
https://www.who.int/publications/m/item/risk-evaluation-for-sars-cov-2-variant-under-monitoring-nb.1.8.1 - World Health Organization「COVID-19 – Global Situation」
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON572 - European Centre for Disease Prevention and Control「Epidemiological update: SARS-CoV-2 and NB.1.8.1 variant assessment」
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/epidemiological-update-sars-cov-2-and-nb181-variant-assessment - 埼玉県「埼玉県全域における最新のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のゲノム情報」
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0714/surveillance/covid-19_genome.html - ひまわり医院「【ニンバス】新型コロナ変異株『NB.1.8.1株』について【特徴・由来・症状】」
https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/nimbus/ - Medical News Today「Nimbus COVID: Definition, symptoms, and more」
https://www.medicalnewstoday.com/articles/nimbus-covid - Uriu, Keiya et al.「Virological characteristics of the SARS-CoV-2 NB.1.8.1 variant」The Lancet Infectious Diseases
(2025年8月23日現在の情報に基づいて作成。最新の情報については上記公式発表をご確認ください)
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