防災に興味はあるけれど何から始めていいか分からない初心者の方、家族全員で無理なく続けられる備蓄方法を探している方、冷蔵庫を活用した効率的な賞味期限管理のコツを知りたい方へ。
正直に言うと、私も去年の台風で初めて「備蓄って何だっけ?」と慌てた一人だった。コンビニの棚がガラガラになって、やっと気づく。普段から備えるって、こういうことなのかと。
その時、近所の奥さんに教えてもらったのが「ローリングストック」という言葉だった。「特別なことしなくても、普段の買い物を少し変えるだけで備蓄になるのよ」。半信半疑だった私が、実際に3ヶ月試してみて分かったリアルな現実を報告したい。
この記事を読んでわかること
- ローリングストック方法の実践的な始め方と継続のコツ
- 家族構成別の現実的な運用方法と初心者でも失敗しないポイント
- 冷蔵庫を活用した賞味期限管理を楽にする具体的なテクニック
- 災害時の調理方法と食料以外の備蓄品管理
- 実際に続けられる備蓄リストと失敗回避策
なぜ今、ローリングストック方法なのか
ローリングストック方法とは、普段使う食品を少し多めに購入し、使った分だけ補充していく備蓄法のことだ。2023年の内閣府調査によると、家庭での食料備蓄を「3日分以上」している世帯は全体の45.8%にとどまっている。つまり半数以上の家庭が、災害時に食料不足に陥るリスクを抱えているということだ。
出典元:~2023年度 家庭の防災対策実態調査~ 防災食(非常食)の備蓄率 59.9%で3年連続増加 一方“お金”と“置き場所”が新たな防災課題に
でも、なぜ備蓄が進まないのか。答えは明確だった。「非常食って、結局食べずに期限切れになる」という声を、取材で何度も聞いたからだ。
実際、私の実家でも母が10年前に買った乾パンが、今も押し入れの奥で眠っている。賞味期限は2019年。完全にアウトだ。
ここで出てくるのがローリングストック。特別な非常食を買う必要がない。これなら初心者でも続けられそうだと思った。
実践してみて分かった「3段階の壁」
ローリングストックのやり方を調べて、実際に3ヶ月間試してみた。そこで見えてきたのは、理論と現実の差だった。
第1段階:「何を備蓄するか」の迷い
最初は張り切って、ネットで「おすすめ備蓄リスト」を調べまくった。でも、家族4人と一人暮らしでは必要なものが全然違う。当たり前だけど、見落としていた。
第2段階:「どこに置くか」の現実
マンション住まいの我が家には、理想的な「パントリー」なんてない。冷蔵庫を活用した備蓄方法を試そうにも、日々の食材でいっぱいだった。結局、リビングの一角にカラーボックスを置いて、そこを備蓄スペースにした。
第3段階:「続けるルール」作り
これが一番大変だった。最初は几帳面に管理アプリを使っていたけど、結局続かない。シンプルが一番だと気づいたのは2ヶ月目のことだった。
冷蔵庫を使った賞味期限管理の現実的テクニック
ローリングストックで最も頭を悩ませるのが賞味期限管理だ。冷蔵庫を活用した方法をいくつか試してみた結果、以下のテクニックが効果的だった:
冷蔵庫の「ローリングストック専用ゾーン」設定 冷蔵庫の野菜室の一角を備蓄専用にした。ここに期限が近い備蓄食材を移動させる「要注意ゾーン」として活用。家族全員が「ここにあるものから使う」というルールを徹底した。
具体的には、冷蔵庫の右上の棚を「備蓄ゾーン」として区切り線を引いた。100均で買った仕切り板を使って、他の食材と物理的に分けている。

マスキングテープ活用法 冷蔵庫内の備蓄食材にマスキングテープで「○月まで」と大きく書いて貼り付け。これが思った以上に効果的だった。冷蔵庫を開けるたびに目に入るから、自然と意識するようになる。

色分けも重要だ。緑色のテープは「まだ余裕」、黄色は「そろそろ注意」、赤色は「今月中に使う」と決めた。信号機みたいで家族にも分かりやすい。
週1回の「冷蔵庫チェックタイム」設定 日曜日の夕方を家族向けの賞味期限管理タイムに設定。冷蔵庫内の備蓄食材をチェックして、翌週使う分を決める。これで期限切れが激減した。


冷蔵庫に“要注意ゾーン”作ったらムダ減った!
災害時を想定した調理方法の準備
ローリングストックで見落としがちなのが「停電・断水時にどう調理するか」という視点だ。備蓄しても、いざという時に調理できなければ意味がない。
カセットコンロは必須
取材した防災専門家が口を揃えて言っていたのが「カセットコンロの重要性」。電気もガスも止まった時、これがあるかないかで食事の質が変わる。
我が家でも実際にカセットコンロだけで1週間過ごす実験をしてみた。普段は電子レンジでチンしていたレトルト食品も、湯煎で十分美味しく食べられる。
ポリ袋調理で節水対策
断水時に重宝するのがポリ袋調理。お米も野菜も、ポリ袋に入れて茹でれば洗い物が出ない。水は貴重だから、この調理法は覚えておいて損はない。
実際にやってみると、パスタもポリ袋で茹でられる。普通に鍋で茹でるより少し時間はかかるけど、味は変わらない。
火を使わない備蓄食材の選び方
停電時を考えると、火を使わずに食べられる食材も重要だ。パンの缶詰、そのまま食べられるレトルト食品、ナッツ類など。「調理不要」という観点で備蓄品を見直すと、選択肢が変わってくる。
食料以外のローリングストック活用術
食料ばかりに目が行きがちだけど、日用品のローリングストックも重要だ。災害時に不足するのは食べ物だけじゃない。
トイレットペーパー・ティッシュ類
これは誰でも思いつくけど、意外と管理が難しい。我が家では「開封したら新しいのを1個買う」ルールにした。常に未開封のものが2〜3個ある状態をキープ。
ウェットティッシュ・除菌グッズ
コロナ禍で需要が急増したこれらの商品。災害時は手を洗う水も貴重だから、ウェットティッシュは必須。アルコール系とノンアルコール系、両方備蓄している。

感染症はいつ、流行するかわからない。忘れがちだけど、要チェックだよ。
常備薬・衛生用品
解熱剤、胃腸薬、絆創膏、生理用品など。これらも「使ったら補充」の考え方で管理。特に処方薬がある家族は、災害時に病院に行けない可能性を考えて、少し多めに処方してもらうよう医師に相談した。
乾電池・充電器類
懐中電灯、ラジオ、スマホの充電器。乾電池は使用期限があるから、時々使って新しいものと交換している。モバイルバッテリーも定期的に充電状態をチェック。
家族構成別の現実的な運用法
取材で聞いた各家庭の工夫を表にまとめてみた:
タイプ | 実践法 | 注意点 |
---|---|---|
共働き夫婦(30代) | 週末の買い物時に家族で在庫チェック | まとめ買いでの重複購入に注意 |
子育て世帯(4人家族) | 子どもでも分かるラベル管理 | アレルギー対応食材の確認必須 |
一人暮らし(20-30代) | スマホアプリでシンプル管理 | 少量パックでの効率的な備蓄 |
高齢者世帯 | 近所の店との連携重視 | 重いものの運搬を考慮した選択 |
新婚カップル | 防災を共通の趣味として楽しむ | 趣味が高じて過剰備蓄になりがち |
特に印象的だったのは、子育て世帯の工夫だった。「子どもが勝手にローリングストックの食材を食べちゃうんです」という悩みから生まれた解決策が秀逸だった。備蓄食材に「いつ食べる?」のシールを貼って、子どもと一緒に管理する家族向けの方法を確立したという。
初心者でも失敗しない1週間分のリアルな備蓄内容
理想論ではなく、初心者が実際に続けられた内容を紹介したい:
主食系(現実的な選択)
- パックご飯(無洗米でもOK):1人×7食分
- 乾麺(そうめん、パスタ):1人×4食分
- パン缶詰:非常時用として各1〜2個
- オートミール:調理不要で栄養価も高い
タンパク質(飽きない工夫)
- 缶詰各種(ツナ、サバ、焼き鳥)
- レトルト食品(カレー、親子丼の素)
- 冷凍食品(から揚げ、ハンバーグ)
- 豆類(缶詰、レトルト)
野菜・ビタミン(盲点だった栄養素)
- 野菜ジュース(意外と重要)
- 冷凍野菜(ほうれん草、ブロッコリー)
- 乾燥野菜、わかめ
- トマト缶(調理に万能)
調味料・調理用品
- 水:1人×3L×7日分(これが一番場所を取る)
- 調味料:塩、醤油、味噌(小分けパック)
- カセットコンロ+ボンベ
- 使い捨て食器、アルミホイル
日用品
- トイレットペーパー:12ロール×2パック
- ティッシュ:5箱パック×2
- ウェットティッシュ:10パック
- ラップ、ポリ袋各種
正直、水の保管場所には今も悩んでいる。21Lを一人で置ける場所なんて、そうそうない。

水だけで21Lって…どこに置くのが正解?
初心者が陥りがちな失敗から学んだ継続のコツ
3ヶ月で学んだ失敗例と対策:
失敗例:完璧を求めすぎた
最初は「絶対に賞味期限を切らさない」と意気込んでいた。でも現実は甘くない。結局、月に1〜2個は期限切れになる。完璧じゃなくても、80%できていれば十分だと割り切った。
失敗例:家族の協力を得られなかった
「私がやるから」と一人で始めたのが間違いだった。家族みんなでルールを決めて、「今日はお父さんがチェックする日」みたいに役割分担した方が続く。
失敗例:アプリに頼りすぎた
管理アプリは便利だけど、結局使わなくなる。アプリよりも、冷蔵庫に貼った紙のメモの方が家族には分かりやすかった。
失敗例:一度に全部揃えようとした
最初からパーフェクトな備蓄を目指して大量購入。結果、置き場所に困って挫折。週に1〜2品目ずつ増やしていく方が現実的だった。
本当に必要な賞味期限管理の方法
結論から言うと、賞味期限管理はシンプルが一番だった。
- 見える場所に置く:奥にしまい込まない
- ラベルは大きく書く:賞味期限は太字で
- 月1回の見直し日を決める:カレンダーにメモ
- 使ったらすぐ買い物リストに追加:忘れる前に
高機能な管理システムより、「あ、これもうすぐ期限だ」と気づける仕組みの方が大切だった。
よくある疑問への現実的な回答
Q:お金はどのくらいかかる?
A:我が家(大人2人)の場合、月3,000〜5,000円の追加出費。でも、まとめ買いでの節約効果もあるので、実質的な負担は月2,000円程度だった。
Q:ローリングストックの賞味期限管理が面倒では?
A:最初はそう思った。でも慣れると、買い物の時に「あと何個あったっけ」と自然に思い出すようになる。完璧な管理は目指さない方がいい。冷蔵庫にメモを貼るだけでも十分効果がある。
Q:冷蔵庫を活用したローリングストックのコツは?
A:冷蔵庫の一角を「期限近し専用ゾーン」にするのが効果的。野菜室や冷蔵室の手前の見えやすい場所に、期限が近い備蓄食材をまとめて置く。家族全員が「ここから先に使う」と分かりやすい。
Q:初心者はどの食材から始めるべき?
A:まずは普段よく食べるレトルトカレーや缶詰から。いきなり全部揃えようとしないで、週に1〜2品目ずつ増やしていく方が続けやすい。
Q:マンションでも現実的にできる?
A:できる。ただし、水の保管場所は事前に考えておく必要がある。我が家は玄関の靴箱の上に置いている。クローゼットの下段も活用している。
Q:家族向けに管理するポイントは?
A:家族それぞれに役割を決めるのが大切。「お父さんは缶詰チェック係」「お母さんは買い物リスト係」など、分担制にすると自然と意識が向く。
Q:賞味期限が切れそうな時の活用方法は?
A:期限間近の食材は「今週の献立」に組み込む。冷蔵庫に「今週食べる」エリアを作って、そこに移動させると忘れにくい。
Q:停電時の調理はどうする?
A:カセットコンロは必須。ポリ袋調理を覚えておくと節水にもなる。火を使わない食材(パン缶詰、そのまま食べられるレトルト)も重要。
Q:食料以外で備蓄すべきものは?
A:トイレットペーパー、ウェットティッシュ、常備薬、乾電池、モバイルバッテリーなど。これらも「使ったら補充」の考え方で管理する。

完璧より“なんとなく続ける”がカギかも
記者として感じた「備蓄格差」の現実

取材を通して気づいたのは、備蓄にも格差があるということだった。経済的に余裕のある家庭は、専用の備蓄スペースを確保し、高価な非常食を揃えている。一方で、日々の食費を削っている家庭では、「余分に買う」ことさえ難しい。
ある母子家庭のお母さんは言った。
「災害対策も大事だけど、今日明日の食事を考えるのが精一杯」。
その現実を無視して「備蓄は大切」と言うのは、あまりに無責任だと思った。
ローリングストック方法は、この格差を少し縮められる方法だと思う。特別な出費ではなく、普段の買い物の延長で始められるから。でも、それでも「余分に買う余裕」がない家庭があることは、社会全体で考えなければいけない問題だ。
視覚的な管理のススメ
文字だけの説明では分かりにくい部分もあるだろう。実際に我が家で実践している方法を具体的に説明したい。
冷蔵庫の専用ゾーン設定
冷蔵庫の右上の棚(奥行き20cm、幅30cm程度)を備蓄専用にした。100均の仕切り板で区切って、他の食材と混ざらないようにしている。ここに期限が近い備蓄食材を移動させる。
マスキングテープの色分け管理
- 緑:期限まで3ヶ月以上
- 黄:期限まで1〜3ヶ月
- 赤:期限まで1ヶ月以内
この色分けが家族全員に浸透すると、「赤いテープの食材から使おう」という意識が自然に生まれる。
リビングの備蓄コーナー
カラーボックス(3段)を1つ備蓄専用にした。上段は水、中段は缶詰・レトルト、下段は日用品という感じで分けている。扉は付けずに、中身が見えるようにしているのがポイント。
最後に伝えたいこと
この記事を読んで分かったことと考えるべきこと
- ローリングストック方法は完璧でなくても意味がある
- 家族向けの協力システムなしには続かない現実
- 冷蔵庫を活用した賞味期限管理システムはシンプルが最強
- 初心者は少しずつ始めることが継続の秘訣
- 災害時の調理方法も事前に考えておく必要がある
- 食料以外のローリングストックも重要
- 住環境に合わせた現実的な備蓄が重要
- 備蓄にも経済格差が存在する現実
3ヶ月間のローリングストック生活で学んだのは、「完璧を目指さない」ことの大切さだった。80%できていれば十分。それでも、何もしないよりずっと安心できる。
災害は忘れた頃にやってくる。でも、忘れないように特別なことをする必要はない。普段の暮らしの中で、ちょっとだけ多めに買う。それだけで、いざという時の安心は手に入る。
この記事を読んだあなたも、今度のスーパーで、いつものカップ麺をもう1個、カゴに入れてみてはどうだろうか。その小さな一歩が、きっと大きな安心につながるはずだ。
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ルポライター・みく

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