正直に言う。私も防災備蓄を「やらなきゃ」と思いながら、ずっと先延ばしにしていた一人だった。
東日本大震災から10年以上が経ち、熊本地震、大阪北部地震、令和元年東日本台風と、災害は確実に身近になっている。内閣府の調査によれば、実際に備蓄をしている世帯は全体の約45%にとどまっているのが現実だ。つまり、半数以上の人が「備蓄したほうがいい」と分かっていながら、実行できていない。
この記事を読んでわかること

- 月500円から始められる現実的な備蓄方法
- ズボラでも続けられる具体的なシステム
- 防災用品ではなく普段の食材を活用する理由
- 備蓄が続かない心理的要因とその対策
- 家族構成別の備蓄戦略
- なぜ私たちは備蓄を続けられないのか
- 月500円でできる備蓄の始め方|完璧主義を捨てるべき理由
- 防災備蓄アイテム比較
- 家族構成別|月500円ちょい足し戦略の具体例
- ズボラでも続く備蓄のコツ3選|実体験から学んだ現実的な方法
- ズボラ向け整理法比較
- 食料以外の備蓄|同じ月500円で揃える生活必需品
- 防災用品優先度別比較
- 実体験:計画停電で学んだ「情報」の重要性
- 「月500円ローテーション」で食料+生活用品を網羅する方法
- データが示す「小さく始める」効果と心理的要因
- 東京都防災意識調査
- 「備蓄疲れ」を防ぐ心理的なコツ
- 現実と向き合う:完璧な備蓄なんて存在しない理由
- 今すぐできる!備蓄スタートアクション
- この記事を読んで分かったことと考えるべきこと
なぜ私たちは備蓄を続けられないのか
昨年、私の住むマンションで防災アンケートを実施した際、興味深い結果が出た。「備蓄の必要性を感じている」と答えた住民は98%。一方で「現在備蓄をしている」は32%だった。
理由を聞くと、「何を揃えればいいかわからない」「一度にお金がかかりそう」「賞味期限の管理が面倒」という声が圧倒的に多かった。つまり、やる気はあるのに、始め方がわからないのだ。
実際、私も最初は「非常食セット」を通販で買って満足していた。でも、その後何もせず、気がついたら賞味期限が切れていた。そんな失敗を経て、今では「普段の延長で備蓄する」スタイルに落ち着いている。

非常食セット買って安心…はあるある!
月500円でできる備蓄の始め方|完璧主義を捨てるべき理由

防災の専門書を読むと、「最低3日分、できれば1週間分の食料を」とある。確かに理想はそうだろう。でも、いきなり完璧を目指すから挫折する。
私が実践しているのは「月1ちょい足し」方式だ。毎月の食費から500円だけ備蓄に回す。これなら家計への負担も最小限だし、無理がない。
具体的には、いつものスーパーで以下のようなものを1〜2品多く買うだけ。
防災備蓄アイテム比較
価格・保存期間・選ぶポイント
これらを月1ペースで追加していくと、半年後には約3000円分、つまり家族2人が2〜3日は持ちこたえられる備蓄が完成する。一度に3000円出すのは躊躇するが、月500円なら続けられる。この心理的なハードルの違いが継続の鍵だ。
家族構成別|月500円ちょい足し戦略の具体例

私がマンションの住民から聞いた実体験を元に、家族構成ごとの「ちょい足し」戦略をまとめてみた。同じ月500円でも、家族の事情によって優先順位は変わる。
乳幼児がいる家庭の場合
隣に住む田中さん(1歳児のママ)の話では、粉ミルクやベビーフードの備蓄が最優先だという。「大人は多少我慢できるけど、子どもはそうはいかない」というのが彼女の実感だ。
- 粉ミルク缶(約400円)※普段使っている銘柄
- ベビーフード瓶詰め(約200円/3個)
- 赤ちゃん用の水(約300円/6本)
特に粉ミルクは、いつもの銘柄以外だと赤ちゃんが飲まない可能性があるため、普段使っているものを多めにストックしているそうだ。
高齢者がいる家庭の場合
階下に住む山田さん(70代の義母と同居)は、噛む力や飲み込む力を考慮した備蓄をしている。
- おかゆレトルト(約150円/3個)
- とろみ付きスープ(約200円/5袋)
- 栄養補助ゼリー(約300円/6個)
「固いものが食べられないので、普通の非常食では対応できない」と山田さんは言う。実際、高齢者向けの介護食品は保存期間も長く、備蓄に適している。
アレルギー対応が必要な家庭の場合
同じマンションの佐藤さん(小麦アレルギーの子ども)は、アレルギー対応食品の備蓄に力を入れている。
- 米粉パン(約200円/2個)
- グルテンフリー麺(約250円/袋)
- アレルギー対応レトルト(約300円/2個)
「災害時に普通の食事が配給されても、うちの子は食べられない。だから自分で用意するしかない」というのが佐藤さんの考えだ。アレルギー対応食品は一般的な食品より高めだが、それでも月500円の範囲で十分備蓄できている。
ズボラでも続く備蓄のコツ3選|実体験から学んだ現実的な方法

以前、知人に勧められて「栄養バランスが良い」という理由で備蓄用乾パンを買ったことがある。でも、普段食べないものは非常時でも食べたくない。ストレス状態で無理に食べるのは、むしろ体調を崩す原因になりかねない。

だから今は、普段から食べているレトルトカレーや缶詰を多めにストックしている。カルディで見つけたパスタソースや、無印良品のレトルト食品なども備蓄に加えている。「これなら食べたい」と思えるものを選ぶのが継続の秘訣だ。
コツ1:ズボラ向け管理方法の比較検証
備蓄で一番面倒なのは賞味期限の管理だ。私もいろんな方法を試してみた結果、以下のような結論に至った。
ズボラ向け整理法比較
おすすめ度・理由・実体験
結局、アナログが一番だった。透明な収納ボックスに入れて、油性ペンで賞味期限だけ直接書く。完璧じゃないけど、続けることの方が大事だ。
コツ2:「普段使い」を前提とした選別基準
非常食として売られているものは、正直まずいものが多い。私が実際に食べ比べした結果、以下のような基準で選んでいる。
- 普段のランチで食べても違和感がない味
- 調理不要または水だけで完成するもの
- パッケージを見てテンションが下がらないもの
例えば、最近気に入っているのは無印良品の「素材を生かしたカレー」シリーズ。普通においしいし、パッケージもおしゃれで備蓄感がない。こういうものなら、賞味期限が近づいても「ラッキー、今日は楽できる」と思えるから、無駄にならない。
コツ3:月1回の「備蓄デー」を習慣化する戦略
毎月1日を「備蓄の日」と決めて、スーパーでの買い物ついでに1〜2品追加する。この日だけは、普段買わないような少し高めの缶詰やレトルトも「備蓄費」として許可している。
ポイントは「特別感」を演出すること。ただの買い足しではなく、「今月の備蓄は何にしよう」と楽しみながら選ぶ。この小さなイベント化が、継続の原動力になっている。

“備蓄デー”って名付けたら続くようになったよ♪
食料以外の備蓄|同じ月500円で揃える生活必需品

備蓄と聞くと食料ばかりに目が行きがちだが、実際の災害では食料以外の困りごとも多い。私も東日本大震災の時、計画停電でトイレが使えなくなって初めて「携帯トイレ」の重要性を知った。
同じ「月500円ちょい足し」の考え方で、生活必需品も少しずつ揃えていこう。
月500円で揃える非食料品リスト
防災用品優先度別比較
価格・使用期限・優先度で整理
私の経験上、携帯トイレと懐中電灯は真っ先に用意したい。特に携帯トイレは、災害時に最も困る問題の一つだ。マンション住まいの場合、停電でポンプが止まると水が出なくなる可能性がある。
出典元:停電に伴う集合住宅等での断水について (大阪市の場合)
実体験:計画停電で学んだ「情報」の重要性

2011年の計画停電の時、一番困ったのは情報不足だった。スマホのバッテリーはすぐに切れるし、テレビも見られない。その時、近所のおばあちゃんが持っていた電池式ラジオに助けられた。
今思えば、ラジオがあるだけで不安は大きく軽減される。最新の災害情報や交通情報、支援物資の配布場所など、生死を分ける情報が得られるからだ。
安いもので十分だから、携帯ラジオは早めに用意しておくことをお勧めする。最近は手回し充電式のものもあるが、故障しやすいので、シンプルな電池式の方が実用的だ。
「月500円ローテーション」で食料+生活用品を網羅する方法

食料と生活用品、どちらも大事だが、月500円ですべてを賄うのは現実的ではない。そこで私が実践しているのは「2ヶ月ローテーション」だ。
- 1ヶ月目:食料中心の備蓄
- 2ヶ月目:生活用品中心の備蓄
これを繰り返すことで、1年後にはバランスの取れた備蓄が完成する。急がず、焦らず、着実に積み上げていく。
データが示す「小さく始める」効果と心理的要因

東京都が2023年に実施した防災意識調査では、備蓄を「少しずつ増やしていく」と答えた人の継続率が最も高かった(約78%)。一方、「一度にまとめて揃える」人の継続率は約34%にとどまっている。
東京都防災意識調査
令和6年度 市民向け重要ポイント
対象:東京都民、外国人及び地域住民
データ形式:JSON、XML(オープンデータとして公開)
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備蓄品1位:水 57.7% が最も多い
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備蓄品2位:懐中電灯 49.4% が続く
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備蓄品3位:電池 41.8% が必需品
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約9割の人が「今後の災害増加を懸念」
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51.5%の人が防災対策を実施していない
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備蓄しない理由1位:「何を買えばいいか分からない」34.8%
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備蓄しない理由2位:「置く場所がない」29.6%
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話し合うべき内容1位:避難場所・避難経路 80.5%
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話し合うべき内容2位:食料・飲料水 64.7%
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話し合うべき内容3位:家族との連絡手段 59.1%
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20代の非常用食糧準備率はわずか26.7%と低い
- ハザードマップで自宅周辺の危険箇所を確認する
- 最寄りの避難場所とそこへの経路を家族で話し合う
- 水・懐中電灯・電池の最低3点セットを準備する
- 家族間の緊急連絡方法を決めておく
- 非常持ち出し品リストを作成し、定期的に見直す
ライセンス:クリエイティブ・コモンズ 表示(CC BY)
API:https://service.api.metro.tokyo.lg.jp
これは行動心理学でいう「スモールステップの原理」そのものだ。小さな成功体験を積み重ねることで、習慣として定着しやすくなる。さらに、「サンクコスト効果」も働く。少しずつでもお金と時間を投資することで、「せっかくここまでやったのだから」という心理が生まれ、継続しやすくなるのだ。
「備蓄疲れ」を防ぐ心理的なコツ

実は、備蓄を始めて半年ほど経った頃、一度やめそうになったことがある。「こんなに揃えて、結局使わないんじゃないか」という疑問が湧いてきたのだ。
でも、昨年の台風で近所のスーパーが3日間閉店した時、自分の判断が正しかったと確信した。パンも牛乳も品切れの中、我が家だけは普段通りの食事ができた。この「実体験」があったからこそ、今も続けられている。
備蓄は保険と同じ。使わないに越したことはないが、必要になった時の安心感は計り知れない。
現実と向き合う:完璧な備蓄なんて存在しない理由

正直に言えば、私の備蓄も完璧ではない。たまに賞味期限を切らしてしまうし、買い忘れることもある。でも、それでいいと思っている。
大切なのは「何もしない」状態から「少しでもある」状態に変わること。月500円でも、半年続ければ3000円分の備蓄ができる。これだけあれば、最低限の安心は手に入る。
災害は予告なしにやってくる。完璧を目指して何もしないより、不完全でも今すぐ始める方がはるかに意味がある。

完璧じゃなくていい、少しでも“ある”が大事」
今すぐできる!備蓄スタートアクション

記事を読んで「やってみよう」と思ったあなたに、今日から始められる具体的なアクションを提案したい。
✅ 今日から始めるなら、まずはこの2つ
- レトルトカレー1つ(普段食べている銘柄でOK)
- 2Lの水1本
この2つをカゴに入れて、レジを通った瞬間、あなたの「備蓄生活」が始まる。大げさに聞こえるかもしれないが、最初の一歩こそが最も重要だ。
✅ 来週までにやってほしいこと
- 透明な収納ボックスを1つ買う(100円ショップで十分)
- スマホのカレンダーに「毎月1日=備蓄の日」と登録する
✅ 1ヶ月後の目標
- 備蓄用ボックスに5〜10品入っている状態を作る
- 賞味期限の近いものから使う習慣をつける
✅ 家族構成に応じた追加アクション
- 乳幼児がいる→普段使っている粉ミルクを1缶多く買う
- 高齢者がいる→おかゆレトルトを1つ追加
- アレルギーがある→対応食品を1品探してみる
この記事を読んで分かったことと考えるべきこと
備蓄は特別なことではなく、普段の買い物の延長でできることがわかった。月500円という少額から始められ、好きな食品を中心に揃えることで継続しやすくなる。完璧を求めず、小さく始めて習慣化することが最も重要だ。
さらに、家族構成によって備蓄すべきアイテムは変わること、食料以外の生活用品も同じ「月500円ちょい足し」の考え方で揃えられることも理解できた。
重要なのは、「どうやって完璧な備蓄をするか」ではなく、「今日から何を1つ多く買うか」という発想の転換だ。災害はいつ来るかわからない。明日からではなく、今日のスーパーで、あなたの備蓄をスタートさせてほしい。
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ルポライター・みく

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