【現場ルポ】2025年初夏、コンビニスイーツ戦争の舞台裏 大手3社の仁義なき商品開発競争

コンビニの冷蔵棚に並ぶ多彩なカップスイーツ。種類、価格、色彩の豊かさが目を引く。 コンビニ

ルポライター・みくです。先月から都内を中心とした23店舗、さらに千葉・埼玉の郊外店舗8店も回って気づいたことがあります。今年のコンビニスイーツ、明らかに異常事態です。

通常なら「季節商品の入れ替え」程度で済むはずが、各社とも開発費を大幅に増額し、マーケティング戦略まで根本から見直している。私が目撃したのは、単なる商品競争ではなく「コンビニスイーツ業界の構造変化」そのものでした。

この記事を読んでわかること

  • セブン・ファミマ・ローソンの2025年6月新商品戦略の詳細分析
  • 店舗での実際の販売状況と消費者行動の観察結果
  • コンビニスイーツ市場の価格競争と差別化戦略の現状
  • 地域別・客層別の購買傾向と今後の市場予測

■データで見る「スイーツ戦争」の実態

まず数字から確認しましょう。私が観察・記録した31店舗での傾向です。

※調査期間:2025年5月25日〜6月15日 ※各店舗1日3時間×3日間の観察による推計値

店舗タイプ新商品入れ替え頻度スイーツ平均購入額レジ通過客のスイーツ購入率
都心部オフィス街週2〜3回280円台約18%
住宅地近隣店週1〜2回240円台約15%
郊外ロードサイド週1回程度190円台約12%

驚くべきは都心部の商品入れ替えペースです。昨年同期の観察記録と比較すると、約1.7倍のスピードで新商品が投入されています。

さらに注目すべき観察結果がこちら。

客層別購入傾向(都内主要15店舗での記録)

年代・性別頻出購入価格帯購入時間帯のピーク商品選択の決定要因(聞き取り結果)
20代女性250-350円15-17時見た目・パッケージデザイン
30代女性200-300円20-22時味の安定性・満足感重視
20代男性150-250円12-14時、19-21時ボリューム・コストパフォーマンス
40代以上男性200-400円18-20時馴染みのある味・品質重視

この傾向を見ると、各社の戦略の狙いが鮮明に浮かび上がります。

■セブン-イレブン:多世代を意識した”ノスタルジー戦略”の計算

新宿三丁目店で継続観察した結果、セブンの戦略意図が見えました。あんバタークレープ(298円)の購入者を時間別に記録すると、興味深いパターンが浮上したんです。

あんバタークレープ(298円)

※引用元:https://www.sej.co.jp/products/a/item/110562/

午前中は50代以上、昼は30-40代、夕方は20代が中心。つまり「懐かしさ」というキーワードで、異なる世代の異なる記憶にアプローチしている。50代には「子供の頃のアンバターパン」、30代には「学生時代のコンビニ通い」、20代には「新しいけど安心できる味」として機能しているようです。

実際、江戸川区の住宅地店舗で60代男性が「これ、昔よく食べたなあ」と言いながら購入する場面を確認。一方、渋谷センター街店では女子大生が「なんか懐かしい感じで美味しそう」と話していました。

セブンの商品企画部への取材では、「多世代アプローチは意図的な戦略」との回答を得ています。キャラメルアーモンドチョコケーキ(348円)も同様の設計で、ビターな大人味で男性客を取り込みつつ、価格設定で女性客層も意識した商品になっています。


※引用元:
https://mognavi.jp/product/877441

セブンの商品企画戦略に関するマインドマップ。多世代対応やインサイト活用、チーム協働による開発手法を体系的に示す。
セブンの商品企画部が語る「意図的な多世代アプローチ戦略」を視覚化したマインドマップ。開発プロセスと成果までを網羅的に示しています。AIが描いたイメージです。

ただし韓国風クリスピークロワッサン(278円)は戦略が明確に異なります。池袋東口店での観察では、購入者の約8割が10-20代女性。完全に若年層特化の商品展開です。SNSでの拡散も実際に確認しており、関連投稿の増加傾向が見られます。

みく
みく

セブンのあんバタークレープ、世代ごとに“懐かしさ”が違うのってすごい戦略」

■ファミリーマート:季節対応と”機能性重視”で差別化を図る

ファミマの戦略で最も特徴的なのは、明確に「用途・機能」を想定した商品開発です。

チョコミントシュー(248円)を新橋の店舗で観察していると、購入者の多くが「暑いから」「さっぱりしそう」という理由を挙げていました。実際に購入して確認すると、確かに口内の清涼感は強く、夏場のニーズに応えた商品設計になっています。

品川のオフィス街店舗では、午後3時以降の売上が急増する傾向を確認。「夏バテ気味だから甘いもので元気出したい」という会社員の声も複数聞こえました。機能性を重視した商品作りが、しっかりと消費者に伝わっている証拠でしょう。

ふわもこティラミス(298円)は、明らかにコストパフォーマンス重視の商品。300円以下でイタリアンデザートが楽しめるインパクトは大きく、三層構造も本格的です。コーヒー系スポンジの苦味、マスカルポーネクリームの滑らかさ、ココアパウダーの香りのバランスが適切でした。

しかし、ゴロゴロチョコのクッキーデニッシュ(258円)については改善の余地を感じます。「ゴロゴロ」を謳っているものの、チョコチップのサイズが小さく存在感が薄い。板橋の店舗で購入した際も、期待値に対する満足度は他商品と比較して低めでした。

みく
みく

ファミマのチョコミントシュー、夏の救世主すぎる…清涼感えぐい

■ローソン:客単価向上を狙う”プレミアム路線”の挑戦

ローソンの戦略は最も明確です。完全に「高単価・高満足度」路線での勝負に出ています。

ハーゲンダッツ マイスイート ストロベリーフロマージュクッキー(398円)は、コンビニスイーツとしては高額な価格設定。表参道店で購入層を観察すると、20-30代女性が中心で、多くが「今日は頑張ったから」「週末だから」といった「ご褒美消費」の文脈で購入していることが確認できました。

実際に購入して検証した結果、価格に見合った満足度があることは確かです。フロマージュアイスのさっぱり感、ストロベリーソースの程よい酸味、ベリークッキーの食感。温度変化で味わいが変わる楽しさもあり、半分溶けた状態で食べると、また違った美味しさが楽しめました。

生ショコラタルト(328円)も同様の高級路線商品。チョコレートの濃厚さは本物で、冷蔵庫で10分程度冷やしてから食べると口どけが格段に良くなります。アイスコーヒーとのペアリングも検証しましたが、相性は非常に良好でした。

クッキー&クリームシュー(218円)は、ローソンらしい安定した品質を維持。クリームの量、クッキークランチの食感、どれをとっても完成度が高く、この価格帯でこの品質は確かに技術力の証明と言えるでしょう。

みく
みく

ローソンのご褒美スイーツ、価格だけじゃない…満足感しっかりあるの嬉しい

■地域差で見えた「スイーツ消費の格差」

今回の調査で興味深かったのは、都市部と郊外での明確な反応の違いです。

千葉県市川市の住宅地店舗では、300円以上の高価格帯商品の動きが鈍い傾向を確認。一方で、200円台の商品は都心部以上に好調な売れ行きを見せています。特にファミマのチョコミントシューは、子供連れの母親が「子供が喜びそう」という理由で購入するケースが目立ちました。

埼玉県所沢市のロードサイド店舗では、セブンの和洋折衷商品が好調です。あんバタークレープは、60代以上の購入率が都心部の約2倍。地方の高齢者層には、懐かしさを訴求する戦略がより強く響く傾向が見られます。

地域別売れ筋傾向(観察期間中の売上動向)

地域タイプ1位傾向2位傾向3位傾向
都心オフィス街ハーゲンダッツ系ふわもこティラミスチョコミントシュー
住宅地あんバタークレープクッキー&クリームシューゴロゴロチョコデニッシュ
郊外チョコミントシューあんバタークレープ生ショコラタルト

この地域差は、各社の今後の店舗別品揃え戦略に大きく影響する可能性があります。

■浮上した業界トレンドと今後の展望

今回の継続観察で最も印象的だったのは、各社の戦略が明確に分化していることです。「とりあえず甘いものを置いておく」時代は完全に終わりました。

2025年コンビニスイーツの主要トレンド

2025年 コンビニスイーツトレンド 🍫 甘さ控えめ・ビター系 健康志向、男性購買層拡大 キャラメルアーモンド チョコケーキ 🧊 清涼感・機能性重視 猛暑対策、暑さ疲れ対応 チョコミントシュー 🍡 和洋融合・ノスタルジー 多世代アプローチ、文化継承 あんバタークレープ 🇰🇷 韓国風アレンジ SNS映え、若年層トレンド 韓国風クリスピー クロワッサン 👑 プレミアム化 ご褒美消費、客単価向上 ハーゲンダッツ各種

特に「甘さ控えめ」トレンドは、2024年後半から加速している現象です。背景には健康志向の高まりと、従来スイーツを避けていた男性層の取り込み戦略があります。

韓国ブームも確実に定着していますが、重要なのは「完全模倣」ではなく「日本人向けアレンジ」が施されていること。現地の味をそのまま持ち込むのではなく、日本人の味覚に合わせた微調整が勝敗を分けています。

■この競争で勝つのは誰か

現時点での「勝者」を決めるのは時期尚早ですが、各社の方向性は明確に見えてきました。

セブンの多世代戦略は堅実である一方、ターゲットが広すぎて商品の個性がぼける危険性があります。ファミマの機能性重視は確実に差別化に成功していますが、商品力のバラつきが課題として残っています。ローソンのプレミアム路線は客単価向上には有効ですが、購入頻度低下のリスクを抱えているのも事実です。

個人的には、今後は「地域特化戦略」がより重要になると予想しています。都市部・住宅地・郊外で明確に異なる消費傾向が確認できた以上、全国一律の商品展開では限界があるでしょう/。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

コンビニスイーツ業界は、完全に「戦国時代」に突入しています。消費者にとっては選択肢が増える利点がある一方で、「情報過多」による選択疲れも起きています。

重要なのは、自分のニーズと予算に合った商品を見極めること。価格だけでなく、購入シーン、満足度、リピート意欲を総合的に判断する時代になったのです。

この競争は確実に商品品質の向上をもたらしています。今後も各社の動向を継続的に観察し、消費者として賢い選択をしていきたいと考えています。

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