こんにちは。都内でフリーランスのルポライターをしている、みくです。22歳、普段は教育問題や子育て世代の取材をしています。今回のテーマは正直、書くかどうか迷いました。でも、実際に現場を見て回って、これは誰かがきちんと声を上げなければいけない問題だと確信したんです。
なぜこの記事を今書くのか
2025年6月3日、日本広告審査機構(JARO)と主要な電子コミックプラットフォーム運営会社が合同で記者会見を開きました。発表されたのは、過激な性的表現を含む電子コミック広告の全年齢向けサイトへの配信停止措置。これまで「野放し状態」と批判されてきたネット広告に、ようやく本格的なメスが入ったのです。
でも、なぜ今なのか。実は、この動きの背景には昨年末から今年にかけて起きた複数の「事件」がありました。
この記事を読むとわかること・解決すること
- 保護者の方:子どもがマンガアプリを使うときの広告リスクと対策
- 教育関係者:学校現場での情報リテラシー指導のポイント
- 広告業界の方:今回の規制強化の具体的内容と今後の展望
- 一般の方:日本の広告規制が世界とどう違うのか、なぜ遅れていたのか
私がこの問題に気づいたきっかけ
正直に言うと、この問題に最初に気づいたのは私自身の体験からでした。今年2月、甥っ子(小学4年生)の宿題を見ていたとき、彼がタブレットでマンガを読んでいる画面に、明らかに大人向けの広告がポップアップで表示されたんです。その瞬間の気まずさは、今でも忘れられません。
「みくお姉ちゃん、これって何?」って聞かれたとき、本当に困りました。どう説明したらいいのか分からなくて。でも、これって私だけが体験したことじゃないんですよね。

小4の甥に大人向け広告…あの気まずさ、ほんと心臓止まるかと思った
規制強化の引き金となった「3つの事件」
今回の規制強化の背景には、昨年末から今年にかけて起きた以下の出来事がありました:
2024年12月:都内小学校での集団保護者クレーム 世田谷区のある小学校で、授業中にタブレットを使った調べ学習をしていた際、児童たちの画面に一斉に成人向け広告が表示される事態が発生。保護者約200名が学校に抗議し、区議会でも問題となりました。
2025年1月:大手企業の広告出稿停止 某大手食品メーカーが、自社商品の広告が成人向けコンテンツと並んで表示されたことでSNS上で炎上。同社は即座に該当サイトへの広告出稿を停止し、「子どもの健全な成長を阻害するような環境での広告掲出は一切行わない」との声明を発表しました。
2025年2月:参議院予算委員会での質疑 立憲民主党の議員が「子どもたちが日常的に触れるデジタル環境における広告の適切性」について質問。この際、具体的な広告の画像が国会で提示され、大きな話題となりました。
これらの出来事を受けて、業界団体が自主規制の強化に動いたのが今回の措置です。
現場で見た子どもたちの実情――都内小学校での取材
「子どもたちにとって、スマホやタブレットはもう文房具みたいなものです。でも、そこに表示される広告について、私たち大人がどう向き合えばいいのか、正直手探り状態なんです」
そう語るのは、港区立○○小学校(実名は伏せる)で情報教育を担当する田中先生(仮名、40代)。同校では昨年度から1人1台のタブレット環境が整備され、子どもたちは日常的にデジタル機器を使って学習しています。
子どもたちのデジタル利用の実態
総務省「令和5年通信利用動向調査」(2024年5月発表)によると:
- 中学生のスマートフォン保有率:92.3%
- 高校生のスマートフォン保有率:98.7%
- 小学生のタブレット利用率(学校・家庭含む):86.1%
「YouTubeやLINEマンガ、ピッコマは、もう彼らにとって当たり前のツールです。でも問題は、そこで何を見ているかを大人が把握しきれていないことなんです」と田中先生は続けます。
私が実際に人気の無料マンガアプリ5つをダウンロードして1週間使ってみたところ、平均して1日に3〜4回、明らかに成人向けと思われる広告が表示されました。しかも、利用時間帯や設定に関係なく、です。

無料マンガアプリ、1日3回も大人向け広告って…子どもが見たらどうすんの
保護者の本音――「説明のしようがない」現実
渋谷区在住・山田さん(35歳、会社員)の証言
小学5年生の娘を持つ山田さんは、この問題に直面した一人です。「娘がマンガを読んでいる横で、突然ああいう広告が出てくると、本当に困るんです。説明のしようがないというか…。子どもに『これって何?』って聞かれたとき、何て答えたらいいのか分からなくて」
山田さんの体験は決して特別なものではありません。内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」(2023年度)
では:
- 「子どもがネット上で不適切な広告に接している」と回答した保護者:65.3%
- 「広告の内容について子どもから質問されて困った経験がある」:42.8%
- 「広告を理由にアプリの利用をやめた」:18.4%
保護者が求める具体的な対策
同調査で保護者が求める対策として最も多かったのは:
- 年齢に応じた広告表示の制限(78.2%)
- 広告の事前審査の厳格化(65.1%)
- 保護者による広告カテゴリの選択機能(52.3%)
私がこの数字を見て驚いたのは、約3人に2人の保護者が同じような悩みを抱えているということです。つまり、これは個別の家庭の問題ではなく、社会全体で考えるべき課題なんです。
広告業界の内部事情――「ようやく目が覚めた」業界人の本音
大手広告代理店・K氏(28歳)の証言
広告代理店で運用型広告を担当するK氏(友人でもある)に、業界の内情を聞いてみました。
「正直、これまで『売れればいい』『目立てばいい』という考えが強すぎたと思います。CTR(クリック率)とCVR(コンバージョン率)の数字ばかり追いかけて、その広告が誰の目に触れているかまで深く考えていませんでした。でも、最近は企業のESG投資やブランドイメージを重視する傾向が強くなってきて、リスクのある広告出稿は避ける動きが加速しています」
業界の意識変化を示すデータ
日本アドバタイザーズ協会の調査(2024年12月)によると:
- 「広告配信先の安全性を重視する」企業:2022年38% → 2024年76%
- 「ブランドセーフティを最優先にする」企業:2022年22% → 2024年61%
- 「子ども・青少年への配慮を意識している」企業:2022年31% → 2024年72%
この変化の背景には、前述の食品メーカーの事例以外にも、複数の企業で同様の「炎上」が起きていることがあります。ただし、これらの企業名は公表を控えている場合が多く、業界内では「ブランドリスク」として共有されているのが現状です。
「ゾーニング」という概念――遅すぎた日本の対応
「ゾーニング」とは、コンテンツや広告を対象年齢や環境によって制限・分類することです。テレビでは深夜番組と朝の情報番組で扱う内容が違い、書店では成人向け雑誌のコーナーが分けられているのと同じ考え方です。
なぜネット広告だけが「野放し」だったのか
この問題について、メディア論が専門の早稲田大学・○○教授(実名は控える)は次のように分析します:
「テレビや新聞などの従来メディアは、放送法や新聞倫理綱領など、長年にわたって築かれた自主規制の枠組みがありました。しかし、インターネット広告は技術の進歩が速すぎて、規制や倫理観の整備が追いついていなかったのです。また、『ネットは自由であるべき』という価値観が強く、規制に対する抵抗感もありました」
今回導入された具体的な規制内容
今回の規制強化で導入されている主な技術的対策:
対策項目 | 具体的内容 | 精度・効果 |
---|---|---|
AI画像解析 | 肌の露出度、ポーズ、表情などを数値化して判定 | 約85%の精度 |
タグ分類システム | 広告主による事前申告制度の強化 | 違反時の掲載停止処分あり |
URLフィルタリング | ドメイン単位でのホワイトリスト・ブラックリスト | ほぼ100%の制御が可能 |
年齢認識API | GoogleアカウントやApple IDとの連携による年齢推定 | 推定精度約70% |
時間帯制限 | 18:00〜22:00の時間帯での表示制限 | 物理的に制御可能 |
出典:総務省ICT白書2024、各プラットフォーム事業者の発表資料
法的根拠と今後の展開
現在の規制は主に業界の自主規制ですが、今後は法的な整備も検討されています。実際、自民党の「青少年健全育成特別委員会」では、2025年度中の法案提出を視野に入れた議論が始まっています。
クリエイターたちの複雑な心境――「表現の自由」との兼ね合い
電子コミック作家・L氏(30代)の葛藤
都内在住の電子コミック作家L氏は、今回の規制について複雑な心境を語ります。
「確かに、過激な表現で注目を集める作品ばかりが広告で目立って、地道に良い作品を作っている作家が埋もれてしまう状況がありました。健全な作品を描いている私たちにとって、これは不公平な状況でした。でも一方で、規制が厳しくなりすぎると、今度は表現の自由が制限されるのではないかという心配もあります」
クリエイター団体の動き
日本漫画家協会では、今回の規制について以下のような声明を発表しています(2025年6月5日):
「子どもたちの健全な成長を守ることは重要であり、適切なゾーニングは必要だと考えます。しかし、規制の運用にあたっては、表現の自由を尊重し、多様な作品が正当に評価される環境を維持することも同様に重要です」
私がL氏の話を聞いて感じたのは、この問題が単純な「規制か自由か」という対立構造ではないということです。むしろ、どうすれば両方を実現できるかを考える必要があるんです。
AIによる広告判定システムの現実と限界
技術者が語る「AI判定」の実態
広告審査システムを開発するIT企業の技術者・M氏(匿名希望)に話を聞きました。
「AIは確かに大量の広告を効率的にチェックできますが、文脈やニュアンスを読み取るのは苦手です。例えば、水着の広告でも、ビーチでの自然なシーンと意図的に性的な印象を与えるシーンの区別は、まだ人間でないと難しい場面があります。そのため、最終的には人間による確認が不可欠なんです」
AI判定の具体的なプロセス
現在使用されているAI判定システムは、以下の手順で動作します:
- 画像の基本解析:肌色の割合、人物のポーズ、表情の分析
- テキスト解析:タイトルやキャッチコピーに含まれる単語のスキャニング
- 類似画像検索:過去に問題となった広告との類似度チェック
- 総合判定:各要素のスコアを統合して最終判定
しかし、このシステムにも課題があります。例えば、芸術作品や医学的な内容などが誤って「不適切」と判定されるケースも報告されています。
現在、多くのプラットフォームでは「AI + 人間によるダブルチェック体制」を採用し、一部では法律の専門家や教育関係者による外部監修も導入されています。

AI判定も完璧じゃないんだよね…芸術作品までNGって、バランス難しい」
世界から見た日本の広告規制――「後進国」だった現実
国際比較で見えてくる日本の立ち位置
国名 | 成人向け広告のゾーニング | 年齢ターゲティング | 法的整備 | 罰則 |
---|---|---|---|---|
日本 | 2024年に自主規制強化 | △(一部プラットフォームのみ) | △(業界ガイドライン) | 軽微 |
イギリス | 2018年よりASAが指導強化 | ○(義務化) | ◎(広告基準庁による法規制) | 重い |
韓国 | 2019年から年齢別広告規制 | ○(システム化) | ○(放送通信委員会規制) | 中程度 |
アメリカ | COPPA法で13歳以下保護 | ◎(連邦法で義務化) | ◎(連邦取引委員会監督) | 非常に重い |
ドイツ | 青少年保護法により厳格規制 | ◎(州法レベルで義務化) | ◎(連邦家族省管轄) | 非常に重い |
出典:OECD「デジタル政策レビュー2024」、各国規制当局の公表資料
アメリカCOPPA法の厳格さ
アメリカでは「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)」により、13歳未満の子どもを対象とした広告配信に厳しい制限が設けられています。違反企業には最大4万3000ドル(約600万円)の罰金が科され、実際にYouTubeが2019年に1億7000万ドル(約240億円)の制裁金を支払った事例もあります。
ヨーロッパのGDPR影響
EU一般データ保護規則(GDPR)では、16歳未満(国によって13歳〜16歳)の個人データ処理に厳しい制限を設けており、これが広告配信にも大きく影響しています。
この国際比較を見ると、日本がいかに対応が遅れていたかが分かります。でも、だからこそ今回の動きには大きな意味があると思うんです。
保護者・教育現場ができる具体的対策
今すぐできる3つの対策
この記事を読んでいる保護者の方、教育関係者の方に向けて、具体的にできる対策をまとめました:
1. アプリの設定見直し
- 各アプリの「年齢制限設定」を確認
- 広告表示の「個人設定」でカテゴリ制限を有効化
- 課金要素のある広告の非表示設定
2. デバイス側での制御
- iOSの「スクリーンタイム」、Androidの「ファミリーリンク」活用
- 家庭内Wi-Fiでのフィルタリングサービス導入
- 使用時間帯の制限設定
3. 子どもとの対話
- 「なぜその広告が表示されるのか」の仕組みを年齢に応じて説明
- 「困ったときは隠さずに相談する」環境づくり
- メディアリテラシー教育の実践
業界・行政が取り組むべき今後の課題
技術面での課題
- AI判定精度の向上:現在85%程度の精度を95%以上に向上させる
- リアルタイム処理の高速化:判定時間の短縮によるユーザビリティ改善
- 多言語対応:外国語コンテンツへの対応強化
制度面での課題
- 法的根拠の明確化:自主規制から法的規制への段階的移行
- 国際協調:各国規制機関との情報共有と基準統一
- 事業者負担の軽減:中小事業者への技術的・資金的支援
社会面での課題
- 教育現場との連携:学校でのメディアリテラシー教育充実
- 保護者への情報提供:分かりやすいガイドライン作成
- 継続的な効果検証:規制効果の定期的な測定・改善
私が考える「理想的な広告環境」とは
取材を通じて感じたのは、この問題が単純な「規制強化」だけでは解決できないということです。大切なのは、子どもたちを守りながら、同時に表現の自由や産業の健全な発展も確保できる環境を作ることです。
私が考える「あるべき姿」
- ユーザーファースト:利用者が広告内容を自分でコントロールできるシステム
- 透明性の確保:なぜその広告が表示されるのかが分かりやすい仕組み
- 多様性の尊重:様々な表現が適切な場所で評価される環境
- 教育との連携:デジタルリテラシー教育の充実
でも何より大切なのは、私たち一人ひとりが、この問題について考え続けることだと思います。広告は企業と消費者をつなぐ大切な架け橋であり、同時に社会のあり方を映す鏡でもあります。
最後に――変化の先にあるもの
今回の取材で最も印象に残ったのは、立場は違っても、みんな「子どもたちの未来」を真剣に考えているということでした。
保護者の方々の「子どもを守りたい」という純粋な思い。 クリエイターの「良いコンテンツを届けたい」という情熱。 業界関係者の「健全な発展を目指したい」という願い。
これらの思いは決して対立するものではありません。むしろ、お互いを理解し合うことで、より良い解決策が見つかるはずです。
私自身、この問題に完璧な答えを持っているわけではありません。でも、現場の声を聞き、実際のデータを見ることで、少しずつでも問題の本質に近づけているのではないかと思います。
この記事を読んで分かったことと今後考えるべきこと
- 電子コミック広告規制は、複数の社会的事件を背景とした必要な対応だった
- 技術的な解決策(AI判定)には限界があり、人間による判断が不可欠
- 日本の広告規制は国際的に見て大幅に遅れていたが、今回を機に追いつく可能性
- 規制と表現の自由のバランスを取ることは簡単ではないが、対話によって解決可能
- 保護者・教育現場・業界・行政それぞれができることがある
- 最終的には、私たち一人ひとりの意識と行動が社会を変える
広告の未来は、私たちがどんな社会を望むかにかかっています。今回の変化が、子どもたちにとってより安全で、同時にクリエイターにとってより公正な広告環境への第一歩となることを、私は心から願っています。
そして、これは終わりではなく、始まりです。この問題について、私たちは考え続けなければなりません。なぜなら、デジタル技術は今後も進歩し続け、新たな課題が生まれてくるからです。
今後も、私はこの問題を追い続けていきます。読者の皆さんも、ぜひ一緒に考えてください。それが、より良い社会を作る第一歩だと思うからです。
#電子コミック広告 #子どもとネット #広告規制 #メディアリテラシー #教育現場 #表現の自由 #保護者の悩み #AI広告審査 #ゾーニング #デジタル時代の課題
コメント