みゆき(21歳・ルポライター)
コンビニアイス業界が騒がしい。セブンイレブンが仕掛ける新作アイスラッシュに、私たち消費者はまんまと踊らされているのではないか。今年に入ってから、店頭には「韓国風」「限定」「映え」といったキーワードが踊るアイスが次々と登場している。果たしてこれは本当に消費者のためなのか、それとも巧妙なマーケティング戦略なのか。現場を歩いて見えてきた真実をレポートする。
この記事を読んでわかること
- セブンイレブン新作アイスの実際の売れ行きと消費者の反応
- 韓国ブームがコンビニアイス市場に与える影響
- SNS映えを狙った商品戦略の実態
- 限定商法の仕組みと消費者心理への影響
韓国アイスブームの正体を追う

※画像引用元:クリーミーヨーグルトボール
「また韓国のパクリじゃん」。渋谷のセブンイレブンで買い物をしていた大学生の女性がつぶやいた言葉が耳に残る。彼女が手に取っていたのは「クリーミーヨーグルトボール」だった。
実際に食べてみると、確かに韓国のカフェで見かけるような色とりどりの球体アイス。でも味は思ったより日本人向けにアレンジされている。酸味は控えめで、中のパフ食感が新しい。価格は税込み335円(税込361.80円)251kcalという数字も、カロリーを気にする女性には魅力的だろう。
発売日:5月27日(火)~順次
販売エリア:全国
セブンイレブン広報部によると、この商品は全国発売で「韓国で人気のデザートをアイスにアレンジした」とのこと。つまり、完全な韓国商品ではなく、韓国風にアレンジした日本オリジナルということだ。これって、どこまでが「韓国アイス」なのだろうか。
主要新作アイス比較表
🍦 新作アイスクリーム商品比較
価格・カロリー・特徴で比較
SNS映えは作られたブームなのか
インスタグラムで新作アイス関連の投稿を見ていて気になったのは、その投稿のタイミングだ。商品発売と同時期に集中して投稿されているパターンが多い。これって本当に自然発生的なブームなのだろうか。
大学でマーケティングを教える山田教授(仮名)に話を聞くと、興味深い話が出てきた。
「最近のコンビニ商品は、最初からSNS映えを計算して開発されている。パッケージデザインから商品名まで、すべてハッシュタグになりやすいよう設計されているんです」
実際、トゥンカロンアイスのパッケージを見ると、商品名が大きく、背景色も写真映えする淡いピンク。偶然とは思えない完成度だ。
限定商法の巧妙な罠
「数量限定」「期間限定」の文字に弱い日本人の心理を、コンビニ各社は熟知している。今回の新作アイスでも、「金のワッフルコーン」は一部店舗限定、ハーゲンダッツとのコラボ商品は数量限定と、限定感を演出している。
新宿のセブンイレブンで店員の佐藤さん(仮名・20代女性)に話を聞くと、
「限定商品は本当によく売れます。特に女性のお客さんは、『もうないかも』と思うと複数個買っていかれることが多い」
とのこと。
心理学の研究では、これは「希少性の原理」と呼ばれる現象として知られている。限定と言われると価値が高く感じられ、購買意欲が刺激されるのだという。
実食レポート:本当においしいのか
ジャーナリストとして、すべての新作アイスを実際に食べてみた。取材費として合計1,500円ほど自腹を切った計算になる。
決してお財布には優しくないですが…
クリーミーヨーグルトボール:
見た目ほど甘くない。むしろ酸味が強めで、チョコパフの食感が面白い。ただ、335円という価格を考えると、コスパは微妙。同価格帯の他社アイスと比べて特別優れているわけではない。
トゥンカロンアイス メロン

確かに断面は美しい。メロンの味も想像以上に再現されている。ただ、サイズが小さめなので、男性には物足りないかも。内容量は約80mlで、一般的なカップアイス(100ml前後)より少ない。
チョコミントカップ

ミントが控えめで、チョコミント初心者には食べやすい。でも、ガツンとしたミントを期待する人には物足りない。個人的には、もう少しミントが強くてもよかったと思う。
正直なところ、どれも「革命的においしい」というレベルではない。でも、それぞれに特徴があり、ターゲットを明確に設定していることは感じられる。
消費者の生の声を集めてみた
実際に街頭で新作アイスについて聞いてみた。渋谷駅前で平日の午後、30分間で偶然通りかかった15人に声をかけ、そのうち答えてくれた10人の意見を集約した。小規模な調査だが、リアルな声が聞けた。
「見た目が可愛いから買った。味は普通かな」(19歳・大学生女性) 「インスタに上げるために買ったけど、正直コスパは悪い」(22歳・会社員女性) 「韓国っぽいって言われても、よくわからない」(35歳・会社員男性) 「限定って書いてあると、つい買っちゃう」(28歳・主婦)
興味深いのは、10人中7人が「見た目」を購入理由に挙げたこと。味については「普通」「まあまあ」という反応が多かった。

新作アイス、味より“映え”重視って感じね🍦📸
業界関係者が語る舞台裏
大手乳業メーカーで商品開発に携わる田中さん(仮名・40代男性)に、匿名を条件に話を聞いた。
「今回のアイス戦争の背景には、コロナ禍で落ち込んだ売上の回復という切実な事情があります。とにかく話題になる商品を作らないと、消費者に振り向いてもらえない。そのためには韓国ブームでもSNS映えでも、使えるものは何でも使います」
また、コンビニ本部で商品企画を担当する山田さん(仮名・30代女性)は「限定商法は在庫リスクを減らす効果もある。売れ残ったら『限定だから仕方ない』と言い訳できる」と本音を漏らした。

“映え”と“限定”は、戦略だったのね…😶🌫️
韓国ブームは本物か、それとも作られたものか
韓国文化に詳しい文化評論家の李さん(仮名)によると、「日本で『韓国風』として売られている商品の中には、実際には韓国にはないものも多い。消費者の『韓国っぽい』というイメージに合わせて作られたジャパンオリジナルが少なくない」という。
実際、韓国在住の友人に写真を送って確認してもらったところ、「クリーミーヨーグルトボール」については「こういうのは韓国でもあるけど、これとまったく同じものは見たことない」との回答だった。つまり、韓国風にアレンジした日本独自の商品ということになる。
価格戦略の巧妙さ
新作アイスの価格設定を既存商品と比較してみると、面白い傾向が見える。
従来のセブンプレミアムアイス:150円〜200円
今回の新作アイス:178円〜298円
他社の類似商品:120円〜250円
明らかに高価格帯にシフトしている。これは「プレミアム感」を演出する戦略だろうが、消費者にとっては負担増だ。月に5個アイスを買うとすると、従来より300円〜500円の出費増になる計算だ。
取材を通じて見えた消費者の本音
この取材で最も印象的だったのは、多くの消費者が「なんとなく」購入していることだった。明確な理由があって買うというより、「話題だから」「限定だから」「可愛いから」という漠然とした動機が多い。
これ自体は悪いことではない。娯楽としての消費は、経済を回す重要な要素だからだ。ただ、企業側がその心理を巧妙に利用している現実も見えてきた。
この記事を読んで分かったことと考えるべきこと
セブンイレブンの新作アイス戦略は、確かに巧妙だ。韓国ブーム、SNS映え、限定商法というトレンドを組み合わせ、消費者の購買意欲を刺激している。商品自体の品質も悪くない。
しかし、私たち消費者は冷静に考える必要がある。本当に美味しいから買うのか、それとも「映える」「限定」という言葉に踊らされているのか。
今回の取材を通じて、私自身も企業のマーケティング戦略にまんまと乗せられていることを実感した。トゥンカロンアイスを買ったとき、正直「可愛い」という理由が大きかった。味は二の次だった。
食べ物は本来、味わうものだ。写真を撮るためのアイテムではない。もちろん、楽しみ方は人それぞれだが、マーケティングに振り回されることなく、自分の舌で判断する習慣を忘れたくない。
今回の取材を通じて感じたのは、企業の戦略と消費者の欲求がうまく合致した時に生まれるブームの力強さだ。ただし、それが持続的な価値を生むかどうかは別の話。一時的なブームで終わるのか、それとも新しいスタンダードになるのか。
正直なところ、今回の新作アイスブームは一過性のものになる可能性が高いと思う。理由は単純で、話題性以外に強い差別化要素がないからだ。味で勝負できるレベルの商品は少なく、見た目や話題性に依存している。
でも、それでいいのかもしれない。私たちは常に合理的な消費をする必要はない。時には「なんとなく」「楽しそうだから」という理由で買い物をして、それで気分が上がるなら、それも価値のある消費だ。
大切なのは、自分が何にお金を使っているのかを理解すること。味のため?見た目のため?話題についていくため?理由を意識して消費すれば、後悔することは少ないはずだ。
とりあえず今は、話題の新作アイスを楽しみつつ、企業の戦略にまんまと乗せられている自分を客観視する。それが、賢い消費者の在り方だと思う。そして時々は、昔ながらのバニラアイスを買って、シンプルな美味しさを再確認するのも悪くない。
ライター:みゆき

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